天気雨
「さすがはわが国を追い詰める国の軍師だ。貴様を追い詰める策など、常人には考え付かんな」
内応。
この無能は、私を排除するために、敵と組んだのか。
そこまで私は恨まれていたか。
いや、権力欲だけでここまで人は徹底できるものなのか。
そんな自問自答が頭の中で繰り返される。
「あ……、これ……ま……、……ん」
もはや、何を言ってるのかすら、聞き取れなくなってきた。
と、奴の背後に控えていた兵が何かを持ち出す。
あれは、弓か。
もはや何人いるかもわからない。
「ではな」
その声だけが、妙にハッキリと聞こえた。
ざぁぁ。
ざぁぁ。
雨音がする。
空を見上げると、憎憎しいほどの晴れであった。
それはもう、透き通るような雲ひとつ無い、青空。
「これは、珍しい。天気雨か」
そう、呟いた。
呟いた、と思う。
刹那、無数の雨が、私の体を貫いていた。