自己解説・秋に見かけた空き地が
今回のテーマは、以下に大別されます。
1.噂の渦中にあるあばら家は一体いつ建てられたのか?
2.なぜ急に表れた違和感を持つべき対象に対してなんの興味も持たないのか?
このうち1は確かにホラーですが、僕の語りたいホラーではありません。「それを書くだけの文章力がないだけだろ」とか言わないこと(笑)。
メインテーマは2のほうにおかれています。
この世には色々とおかしい、と思われるべきことがあります。というより、あるはずです。テレビとかをただ漫然と見ているだけでは気づかないけれど、実は変だしありえないことというのがしょっちゅう起こっている。よく考えたらおかしい、それを気付かずに見過ごしていることがよくある。なぜ見過ごしてしまうのでしょうか?変哲なことが現実で起こったら普通は気付いてしまうもののはずですが…。
ここで『現実』と書かせていただきました。この話では『現実』(『実在』)と『リアル』を区別して書いています。
『現実』…実際に起こっていること
『実在』…実際に存在するもの
『リアル』…各個人が受け止めている世界
そしてそれぞれに対応して反義語があるわけですね。
『虚構』…実際には起こっていないこと、あるいは存在しないもの
『フェイク』…各個人の受け止めている世界から漏れ落ちているもの
そして、『リアル』はモニターの中に存在するものです。具体的にいえば、モニターというのはPC・携帯電話・iPadなどの通信機器、それの画面のことを言っているわけです。それに対して、目で見える「はず」の実際の世界は『現実』『実在』の世界。
結びつけるとこうなるわけです。
視認世界…『現実』・『実在』=『フェイク』
モニター…『リアル』=『虚構』
これだけでは抽象的すぎて何を言っているか分からないので、具体例を出してみたわけです。
(具体例1・ポケットモンスター ブラック・ホワイト)
ここにおける通信方法の違いを整理してみようと思います。
昔のポケモンは通信ケーブルで交換をしていました(知っている方も多いのではないでしょうか)。これはケーブルという物理的な通信方法ですから、当然として近くに友人がいる必要があります。『リア友』というやつですね。
視認世界…『現実』・『実在』→『リア友』
それに対し最近ではWi−Fiによる通信ができるようになっています(GTS…グローバル・トレード・システム)。これによって世界中のプレイヤーと交換ができるようになりました。ただし、お互いに相手の素性など知りません。というより、しったこっちゃありません。
モニター…『リアル』→『名前も国籍も知らない人』
これを整理すると以下のようになります。
視認世界…『現実』・『実在』→『リア友』=『フェイク』
モニター…『リアル』→『名前も国籍も知らない人』=『虚構』
つまり、GTSでいくら交換しても、その人と友達になるわけではありません。しかし、モニター上にいる相手にこそ実態を感じることができる。リア友はモニター上に消息を書いてはいません。でもネットの上でなら、とにかく書いている人がいる。それがボットであろうとも、会話できるならばそのひとにとっては存在(=『リアル』)しているのです(久米田康治の『さよなら絶望先生』のあとがきにもそういう話が載っていた記憶があります)。
(具体例2・女について考察する男)
男にとって『現実』の女は思うようになりません。しかし現実世界は普通思うようにならないものの総合です。どんなに嫌な上司とでも付き合っていかなければいけません。しかし、ネット上の付き合いであればいやになれば切ればいい。いくらでも『プロフ』は存在しています。
視認世界…『現実』・『実在』→『人格』
モニター…『リアル』→『プロフ』(『ブログ』・『アカウント』)
そして、たとえばドラマやらAV(僕は見たことないんでどういうものか知りませんが友人から聞いた話などで勝手に補足して作品内で言及しています)などに出てくる女の人は『役柄』を与えられています。
視認世界…『現実』・『実在』→『個性』
モニター…『リアル』→『役柄』
もう見えてきましたか?『リアル』とは本来その人間(?)が存在している姿とは違うということを度外視してモニターに映るものを信じているということ。人間にとって本来外界を見るために二つ神様がくれた目ん玉は、ほとんど役割を果たしていないのです。モニターこそが真実になっていて、現実世界はもはやどうでもいい、俺には関係ないよ、そういう状態を『リアル』と形容したのです。
昔の人には実感できないかもしれませんが、今の人間はモニターに映る140文字のツイートにこそ血潮を感じ、生身の人間をオブジェクトとして取り扱っているという傾向があるのではないか、という危惧が生まれました。自分自身ももしかしたらそういう風に世界をとらえているのかもしれない、と。そう思ったらそれが何よりの恐怖ではないですか、というのが今回の主題でした。
くれぐれも言いますが、単に1に怖さを感じさせる文章力がなかったんだろというようなことを責めないでください(笑)。
作品名:自己解説・秋に見かけた空き地が 作家名:フレンドボーイ42