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D.o.A. ep.1~7

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「この度は、ラゾーの村民を救うことができず、痛恨の極みである」
次の日、ライルの病室へやってきた、いかにもな軍人・フェルデ中佐は、開口一番、そう頭を下げた。

「もっと早く気付くことができていれば、と…悔やんでも悔やみきれない。
しかし、レオグリット三等兵、君が、ここにこうして生きていてくれているのは我らにとって救いだ」
(こっちこそ、ほんとうにありがとうございました)
わずかに頭を振って感謝を表す。
「体の具合は、どうだね」
「驚くべき回復の早さではあるが、まだとても起き上がれる状態じゃない。質問は短く頼むよ。
それと、しばらく失声の後遺症があるから、通訳しよう」
「そうか。ああ、これはささやかだが見舞いの品だ。まあ、この部屋にでも飾っておいてくれたまえ」
後ろ手に持っていた花束を見せて、小さな棚に置いた彼は、きりっと眉を吊り上げる。

「訊きたい事がいくつかある。答える意思はあるか」
(そのつもりでまっていました)
「では。君が事件当日、ラゾーに帰ったのはいつ頃だったね」
(正確な時間はわかりません。城下を出たのは8時前なので、9時にはなっていたと思います)
「何か、変わったことは」
(最初は、村に全然灯りがないので、方角を間違えたかと思いました)
「ラゾー近辺に失神した魔物が一体、傍に食料と調味料が入った袋が落ちていたが、心当たりはあるか」
(それは俺のものです。突然襲ってきたそいつを倒したとき、落としたんだと思います)
「その魔物前足の爪に人のものと思われる血液が付着していたが、それは君のものか」
(ちがいます。俺もそれに気付いて、人を襲ったのだと直感して、急いで村へ戻りました)
「君が村へ帰ったとき、どのような状況だったか、覚えているだろうか」
(既に、絶望的な状況でした。外にあった遺体には、魔物が群がって、いて…。
村で一番頑丈なのは教会なので、生き残っているなら避難していると考え、ひとまずそこへ向かいました)
「ふむ…そうかね。実に冷静な判断をしたな。 …立て続けにすまない。疲れたろう。休憩をとるかね」
(だいじょうぶです)
首を振る。フェルデはライルの答えを書き記していた手を休めようとしていたが、その返事に、再びペンを持ち直した。

「屋外の遺体は漏れなく魔物の手にかかって損壊激しいが、教会で発見された7人の遺体は…その。首から上を切り落とされるだけに留まっている。よって、我々は屋外と教会とでは、犯行に及んだ者が異なるとの見解を出しているのだ。君は、教会に行った。そこで、どんな事があったか、聞かせてくれるかね」
(教会に着いた俺は、中にいる生き残りに対して何度か呼びかけました。でも、返事はなかった。ノブに手をかけると、鍵はかかっていなくて)
そこまで告げると、嘔吐を禁じえなかった光景が脳裏をかすめ、さっと顔が青ざめる。
「フェルデ中佐、この子の様子が…」
リノンが割って入る。確かに思い出すのは辛いが、やめるわけにはいかない。彼女を宥めるように、左手を上げた。彼女はしぶしぶ口をつぐむ。
(結論から言うと、教会の中にいた人たちも、首から上がなかった。俺は完全に手遅れのところへやって来ただけでした)
「そうか…それは」
フェルデは渋面をつくる。嘔吐のあとを目にしたに違いなかった。
「君も重傷を負って倒れていたが、何者かと争ったような形跡があったな。その何者かが、教会内部にいた者を手にかけたのかね」
(手を下したのを目撃したわけじゃないから、断言できないけど…俺が行ったとき、そいつは確かに、いました)
コクリとうなずく。彼は目の色を変えて、乗り出してきた。
「本当か!どんな奴だった?男か、女か?そもそも人間か?」
「落ち着きなさい、中佐殿。気持ちはわかるが」
フェルドの肩をつかんで、医者は鼻息荒い彼を押し留める。冷静さを取り戻した彼は、しかし目の気迫がそれまでと違っていた。
(そこにいる、リノンだと勘違いしました。そいつはリノンと同じ、肩までの長さの緑色の髪で、薄っぺらい体をしてた)
「ふむ。それで」
フェルデの目が、チラッとリノンに向いた。チラッと見ただけだが、その目には異様に力が入っていたので、リノンは怯んで肩をすくませる。
(違うと気が付いたのは、振り返ったからです。猫みたいな金色の目でした。耳は長くて)
「…エルフ族か!」
かっと目を瞠ってさけんだ。
「緑の肩までの長さの髪の、金色の猫目の、エルフ族…!なるほど、これでかなり特定できるぞ。…貴重な証言を、ありがとう。追って手配書の作成のために、更に細かく訊きたいのだが」
(わかりました)
「そうか。そうか」
興奮気味にライルの手をかたく握る。
強面だが笑うと愛嬌がある。ライルは初めて、このガチガチの軍人に好感を抱いた。



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作品名:D.o.A. ep.1~7 作家名:har