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NAMEROU~永遠(とき)の影法師

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【第三部・第一章 家族の肖像】



休日ののどかな朝、父さんがリビングで新聞を広げている。
一面は昨夜の宇宙ワールドカップ決勝・世紀の大誤審、ウチの父さんは生粋のやきう豚なのでいつも通りにサッカー関連記事はまるっとスルー、
「おーい、母さんお茶!」
顔を上げずに父さんが言った。
「はぁ〜いっ」
リビングに続くキッチンから、心持ちドスの利いた母さんの声が返事した。よくある昭和のホームドラマ、……いや、LDKリビングダイニングキッチンなんてものが世に流行る前に、現実のホームドラマは廃れてしまったのだったか。台所からまた、今度はやや作り物めかした母さんの声がした、
「こぉら、つまみ食いしないのっ」
「ティヘッ☆」
もう一人の少女の声は……、あれはたぶん、僕の妹だ、血は繋がっていないけど。とにかく近所で評判の美少女あるあるチャイナ娘の我が妹は、義理でもいちおう兄貴である僕を日頃兄とも思わずいらんちょっかいかけてはからかってばかりで、……ああ、何だろう、すごく頭が痛い、頭の芯からズキズキガンガンぐらぐらする、キッチンからパーマ頭にエプロンつけた背の高い母さんが現れた、
「……ホントにもー、お父さんたら一度ソファに座るとお尻にマンドラゴラ生えちゃうんだからーぁ、……ってコラーーーーーーっっっっっ!!!!!」
母さんがお盆に載せた茶碗をひっくり返してブチキレた。ハァハァ言ってる母さんの後ろから、丸鶏チキンをとりあいっこする形で互いに片足ずつをくわえた巨大な犬と美少女が、ひょいと顔を覗かせた。
(!!)
僕の心臓がドクンと鳴った、
「……何だ騒々しい、」
父さんが新聞からゆっくり顔を上げた。家の中なのに真っ黒なグラサンをかけている。僕の背中をじっとりといやな汗が伝った。
――……へっ、ヘンな人だ、ボクの、ボクの父さんは……、いいや父さんだけじゃない、ボクの家族は皆どこかおかしい、まともじゃない、何かが違う、壊れているッ……!!
(――!)
僕は頭を押さえた。頭痛がますます激しくなる、
「大体なんでアンタが父さんで俺が母さんなんだよッ!」
父さんを指差し、その手でパーマ頭を掻き毟って母さんがヒステリックにキーキー喚いた。
(……おっ、”オレ”っ……?)
僕は眼鏡を掛け直し、同時に我が耳を疑った。――ウソだ、母さんが男だったなんて、知らない、僕は聞いてないぞ、――もしかしてウチの母さん……、なんて疑ったことすら微塵もない。
「そりゃ私の方が年上だからさ」
落ち着き払って父さんが言った。声のトーンのせいだろうか、妙に説得力がある、「……まったく、今時の若いモンは成果だ能力主義だ、生意気言う前に年配の知恵に学ぶ、ってことを知らん、」
父さんは眉を顰め、片手でクイとグラサンを上げた。母さんはふるふる拳をわななかせている。床に転がった茶碗から零れたお茶が、その間にもフローリングのカーペットに容赦なく沁みていく。
「ねーねー、今日のトリ一匹だけー?」
母さんのエプロンを引いて(よくよく見ると手に付いた油を拭き取っているのだあれは)チャイナ妹が言った。――わん! 舌なめずりして犬も吠えた。半分死んでた母さんの眦がキッと吊り上がった。
「うるさいっ! そんなにトリしばきたきゃ、自分で狩ってきなッ!!」
「えーーーーっ、」
チャイナ妹が油テカテカシャイニー唇をむうと尖らせた。犬はフテて後ろを向いた。
「……やめておけ」
新聞を繰りながら父さんがリビングに重低音を響かせた。「どこもかしこも鳥イソフルで大騒ぎだ、下手に余所から持ち込んで、ご近所中にウイルスばら撒く気か?」
――だからお前は物知らずだと言うんだ、父さんが母さんに冷たい一瞥をくれた。母さんは下を向いて唇を噛んだ。……知らなかった、いつから僕の知らぬ間に、二人の仲はこんなにも醒め切っていたのか。
「!!」
母さんは不意にパーマ頭のヅラを投げ捨てた。下から出てきた地毛も天パだったので大差なかった。ついでに外したエプロンも丸めて壁に叩きつける。何の素材で出来ているのか、若干壁がめり込んだ。硬布球が頬の真横を掠めても父さんは顔色一つ変えなかった。
「実家に返らせて頂きますっ」
手を叩いた母さんが、フンと顎を上げて紋切り型の口上を述べた。――……わぁ、ドラマみたいだ、僕は思った、……たたたたた、また頭がズキズキする、
「実家?」
父さんが片腹痛いと言うように髭面の口元を歪めた。さっきの剛球で裂かれた傷からひとすじの朱が伝う、……おっつ、今度は劇画調ハードボイルドですなァ、痛む頭を押さえながらも僕はチラ見した、
「この家以外、お前に帰る場所がどこにある、せいぜい場末のスナックにパートに出て、安酒浴びてクダを巻くのが関の山だろう」
「あそこのオレンジカルペスものっそ薄っすいね、ざいりょうひケチってるね、からあげもころもばっかだし、」
鼻で笑う父さんに畳み掛けてチャイナ妹が言った、――ブチッ! 母さんの血管が切れる音を、そのとき僕ははっきりと聞いた。