二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
みとなんこ@紺
みとなんこ@紺
novelistID. 6351
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

Today's Military DOG Report

INDEX|1ページ/6ページ|

次のページ
 

*chapter1






これは、東方司令部に勤務する一軍人の見た、司令部の日常風景の記録である。




*




だいぶ日は長くなったが、傾けば夜のとばりはすぐそこまでやってくる。ふと、廊下から外を見れば、街の通りのガス灯に徐々に灯が灯り始めていた。そんな頃、東方司令部の、この長い一日も終わろうとしていた。

といっても、まだ大半の軍人にとっては全然終わってはいないのだが。

ただ自分は幸か不幸か、連続夜勤だったお陰で一抜けが許されたのだ。しかも明日はオフ。ギリギリだったがタイミング的には文句ない。
こんな時、報告他の後処理の責任者とかじゃなくて良かったなー、とかぐったり机に突っ伏している上官たちを見るにつけ、呑気にもそう思う。
まぁ多少の申し訳なさもあるが、事件が収束を見た後の開放感を秤にかければ、勿論傾くのは後者へ。
それでもある程度気をつかって、こそりと帰り支度をしながら、一つ息を付いた。

ここしばらく、東部は落ち着かなかった。
それはいつもの事と言ってしまえばそれまでだが、(実際東部は他の地方の司令部より段違いに忙しいらしい)何か裏で示し合わせでもあったのかと無駄な勘ぐりをしたくなるほどに、まるで何かの強化月間のごとく厄介ごとが続発してくれた。
あっちもこっちも火消しに走らされるお陰で、人手は足らないわ、後処理する間もなく次のおかわりくるわ、通常業務が滞れば色んなところからブーイング、そのしわ寄せを喰らった上司が笑顔でキレる、等見事な連鎖反応だった。
しかし、そんなどーしようもない事態に陥らされても、結局何だかんだで回していかない事には軍以外の何処も肩代わりはしてくれない。どれだけ文句が出ようとも、結局ここしかない、のツライところだ。
そんなこんなで走り回らされた一日が終わって、最後に司令室に残る面々に一声かけてから帰ろうと、部屋を覗きに来たら、何かちっさいのと大きいのが増えていた。


隅っこに申し訳に置いてある古い応接セット。休憩場所兼応接未満みたいな感じのそのスペースに、うちの上官込みで何人かの同僚がその2人を囲んでたむろっている。
そのちっさいのと大きいのはこちらに背を向けているが、その後ろ姿だけで判った。
第一ここは青一色のはずであって、そんな目立つ赤いコートに金髪の子供と、何かやたらでっかい鎧の組み合わせなぞ一度見たら忘れられるわけはない。
東方司令部のボス(正確にはもうひとつ上に半隠居な爺さんがいるが)、マスタング大佐のとこの、錬金術師兄弟だ。

・・・・・・。

・・・そう言えば本日のハイライト、「便乗立て籠もり犯を引っ張り出してさっさとお片付け」作戦の真っ最中に、その名を聞いたような気がする。
もっとも、こっちはそれどころじゃなかったので、その場ではスルーしてしまったのだが。
・・・何か立て籠もり犯引っ張り出してさー終わったやれやれ帰るかー、となった帰り道。別のごたごたがあったらしい何処ぞの店の前の表通りが、派手に崩れていたような気がしたが。・・・関係あるんだろうか。
・・・あるんだろうな。その名前聞いて、何にもなかったこと自体がなかったもんな、今まで。
この兄弟があるところ、必ず厄介事あり、がいつの間にやら暗黙の了解と貸しているもんな。
まぁあの2人がいる事は別に良いのだ。自分的には基本錬金術ってよく判らないので、何だか得体が知れず苦手だと思うに留まるだけだったが、(あまり直に見た事はないが、何せうちのボスの使う錬金術はとてもとても危ないし、怖い)あの凸凹兄弟が来るようになってからは、ちょっとそれに対しては見る目が変わったと思うし。
特に先日、でっかいわりに声は可愛い鎧被った弟には壊れてしまった時計を直して貰ったし。
じゃあ、折角なのでそっちにもちょっと挨拶でもして帰ろうかな、と扉に手をかけたところで気付いた。
何か、人の隙間から、直の上官の金色アタマが応接のテーブルに突っ伏しているように見えるんだけど。
しかも完全にグダグダだ。・・・無理もないが。
一つ現場が片付いたら次、も一つ終わったら次。と、人手が分散したお陰で次々と色んな所にかりだされていたはずから、たぶんここ2日くらいはろくに寝てもいないんじゃなかろうか。(まぁそれだけ使われているのに、まだ動ける辺りが重宝される原因の一つでもある気がするが。丈夫なのも考えものだ。)

様子を窺えば、やはり案の定、グダグダっている人は、火のついていないタバコを銜えたまま沈んでいた。
「だからな、オレはな、癒しがほしいんであって・・・!」
とりあえず前後の話がまったく見えないので、部分的にはなんかまたいらないこと吹き込んでるんだろうなーくらい思っていたのだが、やっぱりいらない事だった。
ああ、いつものあれだなぁ、定例のぼやきだと自分は思うだけだったが、そういった場面にあまりかち合う事のない子供達は各々、癒しって?と、こきゅと首を傾げている。
まぁ、わかんねーよな。何か肩書き他はすごいみたいだけど、まだお子様だし。
しかし子供相手に何を言ってんだか、とは思ったが面白いのでそこには誰も突っ込まない。そのグダグダっているうちの隊長の相棒も同意見なのか、それとも同じようにこき使われてグロッキーなのか、静観の構えのようだった。
「ほら、司令部ん中って何処見てもむっさい男ばっかじゃねーか!これでな?ふつーん時だったら、街に巡回とか出てパン屋のミランダとか花屋のラナリーとかカフェのマリーと会ったりも出来るってのに、こーもこき使われちゃ寄り道も出来やしねぇふんっとにもー色々限界で・・・!」
「え、ハボック少尉ってそんなに彼女いるんですか!?」
「・・・二股?」
「・・・・・・・・・・・・んなワケねーだろ」
ああ、そっちに突っ込むんだ、と微妙に感心してしまった。だって所詮他人事。がっくりと肩を落として脱力する気持ちはわからないでもないが、正直見ている分には色々と面白い。まずは何せ温度差が物凄いので。
かっくり脱力した相方を一瞥し、ブレダ少尉は「こいつにそんな甲斐性あるわけねぇって」とばっさりだ。
「るせーな、おめーは黙ってろ!」
少尉の的確なツッコみに噛み付くと(そこの感想についてはノーコメント)、気を取り直したように隊長は咳払いを一つ。
「だからな。オレが言いたいのは、彼女とかそーゆーのじゃなくてもだな、こーゆー心がギスギスしちまうよーなトコにこそ、潤いが欲しいってわけで」
「女の人って潤いなわけ?」



「キレーなお姉さんとか可愛い女の子と楽しくお話できて潤わねぇ男はいねぇ!」



うわ、言い切った。