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CROSS 第10話 『駆け引き』

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第3章 瀕死状態になった経験



 山口は薄れゆく意識の中で、少し昔に起きた似たような出来事を思い出していた。それは、初めて幻想共和国に行った帰り道に、『霧の湖』に車ごと飛びこんだときのことだった……。



【時間軸】 … 異次元暦42729年 10月25日 夜
【場所】 … 幻想共和国 霧の湖

 その晩はまだ秋であるにも冷え込んでいた。おまけに、異常発生していたらしい赤い濃霧のせいで見通しが悪かった……。
 冷たい湖の水が、山口(当時は山口の役職では無かったが)が運転席にいる車の中にどんどん入ってくる。助けを呼ぼうにも、運転席にいる自分以外に、周りには誰もいない……。とりあえず、彼はシートベルトを外した。
 水圧でドアを開けるのが無理だったので、彼は窓を開けようとボタンを押した。しかし、水のせいで電気系統が壊れてしまっていた……。
 車内の水位が上がるに連れ、彼は焦り始めた。やがて、助手席のほうから、窓割り用の小型ハンマーを取り出した。それを運転席の窓を叩いた。窓ガラスに小さなヒビが入る。彼は何度も叩いたが、車内の冷たい水と車内のため、思うように叩けなかった。
 窓ガラスが割れたときには、胸のあたりまで水位が上昇していた……。おまけに、窓ガラスが割れた途端に、割れた窓からさらに水が流れこんできた。一気に首のあたりまで水位が上がる。
 彼はハンマーを捨て、荷物を持つと、一度深呼吸してから、水中に潜って、割れた窓から車外へ出た。なんとか車外に出た彼は、急いで水上に向かった。冬の冷たい水が彼を包みこんでおり、彼から体力を奪っていく……。
 なんとか彼は、水上に出た。深夜だったため真っ暗だったし、濃霧が漂っていた。。それでも震えながら辺りを見回すと、すぐ近くに岸が見えた。彼はすでに体力のほとんどを使い切ってしまっており、最後の力を振り絞って泳いでいるようだった。
 やがて、彼は岸にたどりついた。しかし彼は、岸に倒れこんだまま気を失ってしまった……。