ひとつの桜の花ひとつ
「はぃ、こちらこそ」
さっきの続きだったけど、本当の後輩になってにっこりで挨拶を交わしていた。
「三咲、今、平気・・」
「うん、交代に中に戻るところだから・・」
「写真撮ってくれないかな」
「いいよー」
「よかった、ごめんね」
「ここ、押せばいいんだよね」
カメラを三咲に渡すと、シャッターボタンを指差して聞かれていた。
「うん、それだけで、平気だから」
「じゃぁ、並んでねー にっこりねー 撮るよー」
3人で、にっこりしてカメラに納まっていた。
「ありがとー 三咲」
「うん、よかったねー じゃぁー バイトしなきゃ、またね」
「ありがとー」
直美と一緒にお礼をだった。
「さぁー 帰ろうかぁー 下北沢まで、もどったらお昼でも食べようかぁ」
「そうだねー なんでも、おごってくれるよ、劉が・・」
「いいんですかぁー ほっとして、もうお腹すいちゃった、きちんと朝ごはんたべたのに・・」
「だったら、いっぱい 食べちゃおう、お財布は劉もちなさいね」
「いいよー」
大きな古い桜の木の下で3人そろって笑顔だった。
ほんとうの桜の花は まだまだだったけど、桜の木の下には、ピンクのマフラーをした桜が一つ咲いていた。
寒さの中で、頬もうっすらピンクのかわいい桜の花一つだった。
満開の桜に負けない、そのきれいな桜の花一つを、直美と俺は、目を細めて眺めていた。
1981年、冬は如月、梅月ゆえの花ばなし
「 ひとつの桜の花ひとつ 完 」
お付き合いありがとうございました。
途中で、バイクを乗っている間に車に追突なんかされまして、連載が伸びました。ごめんなさい。最後には、大地震にも見舞われましたが、無事、連載終了です。
また、次回作の連載を始めましたら。お付き合いください。
作品名:ひとつの桜の花ひとつ 作家名:森脇劉生