二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
たかむらゆきこ
たかむらゆきこ
novelistID. 9809
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

白緑

INDEX|8ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

8. オレンジ



 聞きたくないような、耳を塞ぎたいような声の主は笑う。ちなみに、サンジくんが来る前は1260回だったわよと。収穫したみかんの入った籠を隣に置いて腰掛けていた。ラウンジの上、みかん畑、サンジくんが来る前ということは、やはりデバガメしていたのだ、この女は。
「合わせたら1347回だから次は1348回目ね」
「ナミ、てめェ」
「あたしが先にみかん獲ってたのよ。文句あんの?」
 この船の上、男どもには殆どプライベートなんぞない。
 聞こえるように舌打ちしたゾロは腕立てを始める。1001回からでも1088回からでも1348回からでもない。声に出すことはせずに無言で腕立て伏せを始めた。そんな様子を見たナミは籠からみかんをひとつ出し、丁寧にむき始める。ひと房指につまみ口へ放った。うんうんと味を確かめるように頷いて、ゾロ観察を再開する。煩わしい視線にゾロはまたしても舌打ちだ。
「おい」
「んー?」
「終わったんだろ」
「まあね」
「だったら、」
「ゾロとサンジくんも終わっちゃったみたいねー」
 その言葉に睨みを返すが、さすがナミにはなんのダメージもない。それどころか面白そうな表情でゾロを見ている。
「聞きたかったらあのバカに聞け」
「サンジくんよりあんたの方がバカに見えるわよ、あたしには」
「あァ?」
 フンと肩を竦めて、もうひと房口に入れた。

「なんか知ってんのか?」
「さあ?」
「いい加減にしろよ」
「あんた‥誰に向かって口利いてるかわかってるのよね?」
 いつものような冷笑。しかし内容が内容、ゾロも先ほどのナミと同様になんのダメージもないらしい。肩を落としたナミは本当に知らないわよと溜息を。だけど、あんたがサンジくんをそういう扱いしてるのはなんとなくわかるわ。どんな扱いだよとゾロが聞けば、大切なタカラモノ、ナミは笑う。
「タカラモノだ?」
「そう」
「あいつはレディみたいに扱うなって言ったぜ?」
「そりゃあサンジ君のタカラモノがレディだからじゃない?」
 身を挺してでも守りたいもの、そう口にした。
「あんたがサンジくん庇ったこと、あたしたちには言わなかったけど」
 なんとなくわかるわよ、きっとみんなわかってるわ。そしてサンジくんもそのことをわかってる。ナミはゾロに言い、仲間なら当然だけど、あんたの場合は少し違うわね。皮肉っぽく笑って付け加えた。

「ただね、サンジくんは少し恐がりなのよ」
「あ?」
「自分が一人の人間の夢を喰い潰したと思ってるから」
「‥‥‥‥」
「だからあんなこと言ったのね、きっと」
「あんなこと?」
「大剣豪になった暁にはってヤツ」
 今回みたいなことがあると、あんたの夢を優先に考えるの。わかるでしょう?サンジくんの性格、あんたが一番知ってるはず。自分が今しなきゃいけないこともわかるはずよ、言い終わってから、最後のみかんを口に放る。

「じゃーね。後は自分でどーにかすんのよ」
 立ち上がったナミは、みかんをひとつゾロに投げた。
「あ?」
「頭が働くようにビタミン。あー、ルフィには内緒ね」
 頑張んなさいよ、サンジくん放って置いたら許さないわ。笑って背を向ける。わかったと、そう小さく漏らしたゾロに、そうだ、とナミ。
「身を挺してでも守りたいもの」
 サンジくんは自分の気持ちを挺しても、あんたの夢を守りたかった。どーゆーことかわかってるわよね?それだけ行ってラウンジへと降りて行った。


 言われなくてもわかっちまうだろ、苦笑いしたゾロはみかんを食む。
 甘酸っぱい香りに苦笑い、曇った空を見上げた。

作品名:白緑 作家名:たかむらゆきこ