今風の「焼津のたこ部屋」体験
これは俺が体験した静岡の焼津市に有る建設会社の寮の話です。
ここでは今風と書いてますが、俺には「たこ部屋」としか思えませんでした。
5年前の或る日、大阪駅の構内をあても無く歩いておりました。その時の所持金は8000円。これからどうすればいいのか思案しながら・・・
構内の椅子に座って考えてると、中年の親父さんが「兄ちゃん、仕事探してるのか?」って声を掛けてきました。いわゆる手配師です。
俺も手配師の事は知ってましたので、まさか俺に声が掛かるとは思いませんでした。
住む場所も無く、腹も減ってたので着いて行きました。
お金は隠してあったので、親父さんは煙草と缶コーヒーを買ってくれ、寮がある「阪神尼崎駅」まで電車で移動しました。
寮はプレハブの2階建で、俺は2階の大部屋に入れられました。そこには先に住んでる3人と後から入った2人の6人です。
まずは夕食と風呂が準備してあるので、先に全部済ませて後は寝るだけです。
翌朝は俺と後の2人は仕事が無いので部屋で過ごし、後の3人は仕事に行きました。
みなさんが重量鳶です。こんな生活が1週間続きました。
そして俺達には、関西では仕事が無いので静岡に行って欲しいと・・・
最初からそのつもりだったようです。
金曜の午後5時にワゴン車で焼津に向かいました。
ひたすら高速を走り、午前2時過ぎに焼津到着です。
着いた場所はやはり建設会社の寮でした。
俺と1人は別の寮で、もう1人は先の寮です。
その別の寮が「たこ部屋」風なのです。
古い民家を改築したようで、2階の大部屋に俺達を含め8人が雑魚寝です。
部屋の中はトランクス、ブリーフ、肌着のシャツ、作業服、ニッカズボン等が干してあり
、傍にはエロ雑誌、コミック等と煙草の吸殻。
布団も誰が寝たのか分からないような物を渡されました。
敷布も染みが付着してるような物を・・・
仕方が無いので寝る事にしましたが、野郎同士の雑魚寝は辛い。
これからどんな生活が始まるのか・・・
作品名:今風の「焼津のたこ部屋」体験 作家名:貴文