魔法のランプ
「わたしはこのランプに封じ込められていた精霊です。封印を解いてくれたお礼に、あなたがたの願いを叶えてあげましょう」
ワッと湧き立つ三人を制し、精霊はただし、と条件をつけた。
「ただし、叶えてあげられる願い事は一人につき一つまでです。わたしの魔力にも限りがありますからね。考える時間をあげますから、願い事は慎重に決めなさい」
顔を見合わせた冒険者たちのうち、ひとりの青年が親友の腕を引っぱって隅のほうへ連れて行った。
「なあ、お前どうする?」
「どうするって?」
「決まってるじゃないか。今ならランプの精の力で、彼女に振り向いてもらうことだってできるんだぞ」
宝を求める長い長い三人の旅。その中で、彼らは二人とも、紅一点の女冒険者に恋をするようになっていたのだった。青年の言葉に親友が振り返ると、ひとり精霊の前に残された彼女は、視線に気づいてにっこりと彼らに微笑みかけた。
だが親友は彼女の無邪気な笑顔を見ていられなくて、思わず顔を背けてしまう。
「……僕もそれはちょっとだけ考えた。だけどね、ランプの力で彼女の心をどうこうしようなんて、僕はやっぱりよくないと思うんだ」
心優しい親友らしい意見に、青年はうなずいた。
「そうか、そうだな。実は俺もそう思ってた。魔法で操られた彼女なんて、俺たちが好きになった女の子じゃないよな」
「うん。どうせなら彼女自身の意思で、僕たちのどちらかを選んでほしい」
「よし。あいつが俺とお前のどちらを選んでも、恨みっこなしだからな」
話がまとまって、青年は彼女のほうに向かって手を上げた。
「レディ・ファーストだ。お前が最初に願い事を言ってくれ」
「あら、本当? ありがとう」
甘いあまい蜂蜜のようなきらきらとした笑顔で、女冒険者は微笑んだ。
「実は私の願い事はもう決まってるの。
ねえランプの精さん、この二人をホモにしてちょうだい」