仮面兵団は今日もゆく
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まだ神が世界を作ってそれほどたたない間に(しかし人間には悠久の時に思われて)人間はあっと言う間に成長し知恵を得たがそれが戦争をするようになってしまっていた。争いの中で国によっては国内に十分な人がいないと、あるいはいてもそれほど役に立たぬものばかりで仕方がないと、あるいはまた貴族どもが既得権益を主張するので、傭兵なんかを雇う必要があった。
あるものたちは髪を一様に蒼く染め、あるものたちは皆一様に赤いマフラーを巻き、あるものたちは髑髏を被る。要は金だけのために、そして自らのために働いている、戦っていることを主張せんとしているわけである。
そして、どこの民族にも属さないことを主張する。そんな傭兵団の一つに、仮面兵団があった。みな仮面を被り、剣を振るって敵に向かう。そしてたとえば「こちら白鷲(しろわし)。ただいまヴァイスのほとりに着いた。応答を願う」「こちら青鳳凰(あおぼうおう)、応答する。そちらの様子はどうか」とまあ、このようにコードネームで呼びあって。
仮面兵団が仮面を被るのには、主としてそれが顔を隠すからと言う理由だ。つまりみんなすねに傷を負ったものたちなのだ。わずかにはみ出ている顎の部分だけで人は判別できない。…まあ、逆に言えば素行はよろしくないのだが。
そんな彼らを雇おうと言った小国の王ヴィスティオは、大国フランチスを攻めんとしていた。大国をせめて仮面兵団は皆死んだ。しかし大国はその大きな部分を失った。混乱が起こり大戦が起こった。小国の王ヴィスティオはその混乱で大きな地方を手に入れた。だが国の正史に仮面兵団は記されなかった。彼らはならず者。ならず者の力で国を広げたなど格好が悪い。
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だが、仮面兵団の名は知られていった。
小国のために命を落とした彼らはその国では忘れられたが、フランチスでは物語となった。そして、子供が悪さをすると母親は決まって「そんなことをすると仮面兵団が来るんだよ」といって諫めたという…。
仮面兵団は、今日もゆく。
作品名:仮面兵団は今日もゆく 作家名:フレンドボーイ42