tears
そんな僕には一応彼氏がいる。こいつがまたBL小説にでてくるような浮気性で、本当に軽いやつなんだ。ただ、BL小説では浮気彼氏は別れをきりだされたら恋人を引き止めるけど、僕の彼氏はそんなことしてくれない。来るもの拒まず、去る者追わずがモットーなんだって言ってたよ。
こんな僕もねやっぱり記念日ぐらいはって淡い期待を持ってた訳ですよ、はい...
腐のつく皆さんになら展開、読めますよね...
あいつの家のドアを開け、視線を下にずらす。そこにはあいつと男物の靴が仲良く揃えておかれていた。はー...ため息をつき、憂鬱な気持ちを振り払うように廊下を進み寝室の前にいく。少しためらいつつも意を決してドアを開ける。
...やっぱり
「なんで千尋がここにいんだよ。今日来るなんて言ってなかったじゃねーか。」
「...」
「卓弥くん、この人誰?」
「あ?おまえには関係ないやつだよ。少し黙っとけ。」
女の子のような可愛い男の子と未だに抱きついたまんまこっちに顔を向けてくるあいつ。いつもなら楽しめそうな光景も、自分が当事者だとけっこうきつい。ってか普通は恋人の前でそんなにいちゃいちゃできないっしょ。ホント、悲しいというか呆れちゃうよな。しかも、こいつ今日が何の日かも忘れてるよ。たしかに今日行くとは言ってなかったけど記念日には絶対に行くっていい続けてたのにさ...。
視線をずらし言いたいことを整理する。あいつの言葉が妙に感に触って、今口を開けば言うつもりのないコトまで言ってしまいそうだった。
そんな僕がずっと黙ってんのを泣いてんのかと思ったのかあいつは、
「なに泣いてんだよ。まじ面倒くさいな。」
ため息まじりにつぶやいたこの一言で僕もプツんと切れてしまった。思いのまま、感情のままに言葉を吐く。
「はあ?僕がなんで泣かないといけないの。自意識過剰すぎっしょ。むしろ呆れてたんだよ。一応僕たち恋人同士なのにさ、浮気現場を見られてなお平気な顔している卓弥にね。今日が何の日かなんてどうせ覚えてないんでしょう?僕たちの記念日だよ。いつもは許してきてたけどさ、流石に記念日に浮気。それだけじゃなく『面倒くさい』だって?もう無理。卓弥とは別れる。さよなら。」
「いきなりなに怒ってんだよ。おい、千尋。おい....」
僕はとりあえず言いたいと思っていたことだけ言って踵を返した。背後で卓弥が怒鳴っていたけど、もう関係ないことだ。おおかた自分が貶されたのがかんに触ったんだろう。
やっぱり卓弥は追いかけてくれなかった。経験上来ないってわかってたけど、どこかで期待していたようだ。少しだけ涙が流れた。勢いで別れてしまったので、あんまし覚悟が出来てなかったんだ。頬を伝わる涙に言い訳して僕は泣いた。
涙が思い出を洗い流してくれると信じて...