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レインの旅

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そう、あの日は嵐だった





風は強く、窓を揺らし


木々は怒り狂うかのように踊り


海は地を削る勢いで荒れた








そんな日に、僕はアナタ達と出会った



その日より、前の出来事を知らない


血だらけの俺を、優しい笑顔で手を差し伸べてくれた




アナタ達に










一夜  家族
















「レインー!レイン、ご飯よー!・・・って、あら?何処に行ったのかしら」





「レインなら、北の森のほうにへと歩いていったよ」




「あら、残念。折角、村長さんの奥さんから貰ったリンゴでアップルパイを
 作ったのに!アナタは今から食べます?」



「ああ、一服しようかな。紅茶も頼めるかな?」



「はーい」







ここは、街から遠く離れたピース村

自然は生い茂り、動物達は健やかに成長し、水は潤い、とても住みやすい村である

人は皆、親切で一つの家族のように繋がっているこの村に

主人公こと、レインが住んでいた











『レイン、お母さんが呼んでるよ!』

『アップルパイを作ったんだって!』


チチチ、と鳴く二匹のスズメ達がレインの肩に止まる


「本当?それじゃ、早く帰らないとね」


『僕にも頂戴!』

『私にも!!』


「わかったわかった!」




レインには、不思議な能力があった。

動物・植物の声が聞こえるのだ

それはある日、高熱を出し、寝込んでいるときになったようだと考えられる

5歳からこの不思議な能力を得て、最初は皆の反応が怖かったけど

ピース村にはそんなひどい人はいなく、皆は"すごい"とレインを褒めた

ここにいる動物達、植物達は優しくレインが来ると皆喜んでレインに近寄るぐらいであった





「母さん!」



「あら!調度いいときに来たわね、レイン。ちょうどハーブティーが出来た所なのよ」


「やった!俺にも頂戴!」


「ええ、勿論!ほら、アナタ達の分も」



小さくちぎったアップルパイの欠片を地面に投げると、レインの方にいたスズメ達は欠片を一生懸命集めた



「村長さんの奥さんから貰ったリンゴなの。とーっても美味しかったから、パイにしちゃった」


「じゃあ今度はパイじゃなくて違うの作ってよ!!」


「ええ、勿論!」



ふふふ、とレインの母親は笑う

彼女はこの村で一番美しいと言われる女性であり、名はミュートン・コルジャ

コルジャ、はこの村では"美しい女神"という意味であり、その名にぴったりの容姿である

父親は特にそんな特徴はないが、親切で明るい、まさに絵に描いたような父親である

名は、ミュートン・サイフォンス



「俺のはちゃんと残してあるのかいー?」


と、遠くから声が聞こえて、母はクスクスと笑う




「ちゃーんと残してありますよー!レインが全部食べなければ!」


「よっしゃ食ったろ」


「おーいレイン君ー?ちょっと不吉な言葉は聞こえたんだけどー?」


「気のせいだよ気のせい」


「そっか、気のせいか」


「ただ、このアップルパイを全部食べようかなって思っただけ」


「気のせいじゃなかった!!!!!」




やーめーてー!と叫びながら走ってくる父親を見て、母親と笑いあう。


すると、キッチンからピューッという音が聞こえ、なんの音かと首をかしげた瞬間、母が顔を真っ青にした




「きゃー!!やかんに火、つけっぱなしだったー!!」



バタバタとあわててキッチンに入る母を見て、クスリと微笑むレインであった









作品名:レインの旅 作家名:銀一