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上田トモヨシ
上田トモヨシ
novelistID. 18525
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本日のオカズ

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ピンポーン。

俺しかいない部屋に、インターフォンの間抜けな音が鳴り響いた。
その時の俺が何をしていたかと言うと、まあその、アレだ。ちょうピンクな雑誌を片手にマスかいてたわけだ。
今時中坊でもやらねえって思うだろ。だけどな、青春をはるか昔に音速で通過した俺にも、いろいろと事情があったんだ。いわゆるオトナの事情ってヤツだ。
一ヶ月前に半年付き合ってた彼女にフられたりとか、それからずっと仕事が忙しくて聖職者も坊主も真っ青な禁欲生活だったりとか、昨日たまたま立ち寄ったコンビニですげえイイ感じのエロ本発見したりだとか。
そこから先はご想像にお任せするが、俺は今現在進行形で絶賛お取り込み中だ。

ピンポーン、ピンポーン。

薄っぺらいドアの向こうの相手は、まだ諦めていないらしい。
だから俺は、今ちょう忙しいんだって。人間の三大欲求ってのは生理的現象であるからして、そこには抗いがたい魔力的なものが作用してみたりするわけで、何が言いたいのかってつまり。
今の俺は手が離せません。いろんな意味で。

「は…、」

いや、エロ本って素晴らしいね。何がって、色っぽいオネエサンたちが文句も言わずに脚を開いてくれたりとか。コレはねえだろって感じの服装から手堅いコスまで選り取り見取りだったりとか。
まあ、短絡的な欲求の暴走を一時回避するにはもってこいのアイテムだって話だ。

ピンポーンピンポーン、ピンポーン。

まだいるのか。出てやる気も義理もないので無視。俺の神懸ったスルースキルをナメるな。道端の地蔵も裸足で逃げ出すぜ。
そんなことはどうでもいいが、生憎、今の俺には自分の大事な息子の成長を手助けするという重大な使命がある。新聞の勧誘か不思議壷のセールスかは知らんが、さっさと諦めて帰れ。

「っ…は…」

よし、頑張れ俺。というか俺の息子。むしろ俺の視覚聴力妄想力。
この紙っきれは平面であって平面にあらず。温度もなければ触ることもできやしないが、ありったけの脳内データと記憶を駆使して補完しろ。
そしたらアラ不思議。ナイスバディなオネエサンが俺をその瞬間へと導いてピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン。

「…誰だよ!」

萎える。ヒジョーに萎える。
どこのお宅のインターホンを連打してくれようと俺は一向に構わんが、なぜうちでやる。しかも俺の息子の一大事に。

ピポピポピポピポピポピンポーン。

ケンカ売ってんのか。いい度胸だコノヤロウ。
傍らに待機させておいたティッシュで自分の右手を拭い、成長を止めた息子をしまい、首洗って待ってろよと立ち上がろうとした瞬間だった。

「いつまでマスかいてんだコラァ!」

ちょ、ホンキ勘弁してください。ココ防音とか完璧スルーなボロアパートですから。プライバシーなにそれオイシイの状態ですから。
あんまりな内容の大絶叫に足が縺れてこけたのは仕方のないことだと思う。
むしろ何でバレてんの。しかもこの声は、俺の生まれた時からの腐れ縁の双子の兄貴じゃねえか。隣の部屋に住んでて合い鍵だって持ってるくせに。それなんて嫌がらせだよ。

「ちょ…あにき、まっ…」

「今日のオカズはなにぃーっ?」

その叫びは晩メシの内容を問うものだったのか、はたまたエロ本のオネエサンについてだったのか定かではない。
ただ一つ言えることは、この間ゴミ出しに行って隣の部屋に住んでるオネエサンに出くわした時、軽く白い目で見られたのは確実に兄貴のせいだってことだ。









作品名:本日のオカズ 作家名:上田トモヨシ