A
だって煩いんだ、外が。
0.5ミリの窓は重音に心を躍らせたように震えている。
勉強机にうつぶせて頭を抱えると、耳元のスピーカーから心地良いピアノのメロディーがある。
さすが文明の時代と僕はこの瞬間に驚嘆したくなる。
どこかおかしいだろうか?
大好きなメロディーを口ずさみながら、レースのカーテンからこぼれる陽の光をまぶしそうに見つめる。
ふっ、とため息を一つ吐くと二度寝の兆しが脳内に過ぎる。
昨夜の夢の記憶が無い……。
しだいに「月光」のメロディーが僕を包み込み始めた。
鬱鬱と首が船をこぎ始めるとそこからはハイスピードだった。
足の裏に地面を感じる。一瞬だけ背筋に冷たいものが走るけれど眠さが遥かに上回っている。
僕はそのまま眠りの底へ――
「何してんの〜! 早く降りてきなさい!!」
親に起こされてしまう。日常的すぎて現実逃避さえできやしないんだから。
僕は枕を投げ出して、床に踏み出した。
「さぶっ!」
やっぱり床は冷たかった。