十七秒間の天国
胴体の頸木から解放された私の頭部は、硬い床板に打ち付けられた後、何度か転がって青空を見上げていた。
転がるうちに方向も何も分からなくなり、最早私の胴体がどこにあるのかすらも分からない。
しかしそんなものは、もう必要ない。
私の眼球は二度ほど不規則な痙攣を繰り返し、明瞭な視界を取り戻した。
呼吸が出来ない。
それは私の肺が、切り離された胴体に置き去りにされたせいだけではなく、染み一つ見当たらないこの空の青さのせいだ。
胸が潰れそうだ、とでも表現するのだろうか。
尤も、潰れる胸など、私には既になかったのだけれど。
(十七秒間の天国、それは生きている私が最後に見た楽園だった。)