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クマとヒョウの人形

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熊と豹
                            
                               
僕――それは白熊のヌイグルミだ。『愛と優しさ』のキャッチフレーズを背負いトルイスターズというおもちゃ屋で販売している白熊の人形。中身は綿しか入ってないけど自分にはそれで充分に心地がよかった。僕の値段っていくらだろう? ふとそんなことを考えてみるが、如何せん人形ゆえなにもわからずじまいだったのだ。その真隣には黒豹の人形が置いてあった。その黒豹のキャッチフレーズは
――気高き野心をもった孤独に生きる豹――
こんなフレーズだった。僕の体は当然みることができないから、ずっと黒い豹ばかり見続けていた。この黒い豹は凄まじかった。華奢な作りをしているようですごい力強さや存在感がすごい伝わってくる。試しに僕は声をかけてみたんだ。
「ねぇ、どうしたら君のようになれるの?」
そんな事をきいてみた。そしたらそいつは言ったんだ。
「そうなりたいと思えばすむことですよ」
「へぇ、そうなんだ」
僕は白熊。もちろん、この黒豹の言う事を信じた。でも今の僕は変わりたくなかった。そんなことで僕は黒豹からいろいろな話をきいた。自分の知らないことを情報交換した。もちろん自分が持っている象徴のことしか話すことはできなかったけどね。そして、僕らは少なくとも友達以上の関係になれた、僕はそう思ってた。
 しかし、こんな時間も終わりのときがやってきた。親子連れの少女がお店にやってきたんだ。最初は、なにも考えてなかった。僕もその黒豹もまさか、あんな形で再会するとか。いやでも黒豹は知っていたのかもしれない。僕は絶対黒豹がその時選ばれると思った。僕もそれでよかったし、ましてや飼い主に対して思いいれなんてあるわけがない。
けどその少女は言った。
「この白熊がいいな」
それに対して親は言った。
「この黒豹のほうがいいんじゃない? かっこいいよ。ほら背中に音声スイッチがあるし」
親はポチッと黒豹の背中にあるものを押す。
「※※※※※」
なにをいってるか理解できないけど、人間の言葉を喋ることができる黒豹らしかった。
「その言葉、僕らの言語でいうとなんていうの?」
「いぇ、別にただのまやかしの言葉ですよ」
そんなことをいうばかりで、その黒豹は結局意味を教えてくれなかった。 
とりあえず僕は買い取られることになったので、黒豹に別れの挨拶をしたんだ。そしたらあいつは何も言わなかった。キザな奴だな、と思った。
一時の勝負では勝ったものの白熊は生産数が黒豹ほどではなかった。駆動式、ライト、その他の品質が本質的にクォリティーが桁違いで値段も十倍以上の差があった。黒豹は新しくキャッチフレーズができていた。
ハイエンドな豹『気高く』売ります」


                   ※


数日してあの黒豹はなぜかまた隣にいた。
今度は買い取られた家で・・・・・・
 とりあえず豹は何も言わない。白熊も何もいわない。お互い牽制しているのだろうか。店先とは違いヌイグルミは何も喋りはしない。子供が手にとって遊ぶときも人間がいない時も。そして3年が経ったが家にあった白熊は品質のせいか汚れが目立つようになり飼い主の意思により廃棄がきまったかのようだった。
「残念だな。白は汚れが目立つからな。君も黒ければよかったのに」
「いや、いいんだ。自分を安売りはしたくないし」
「そう、いいんじゃない? 満足したならさ」
黒豹はまるで全てがわかってるような口調で言った。
白熊は翌朝から黒豹の隣にはいなかった。家主に触れられるのも黒豹だけとなった。
黒豹は後々家主からの発言を耳にした。
「残念ねぇ。でもしようがないわ、あの白熊はプレミアものだもの」
「まぁ、僕たちには理解できない範疇のものだったのさ・・・・・あんな白熊がねぇ」 
「本当の意味で理解がある所にいけたならいいわよね」
「いまごろは・・・・・・・お屋敷のお嬢さんの所かしらね」
「さぁどうだろう。でもきっと喜んでるだろうさ、あのぬいぐるみも。あの子は大分喜んで遊んでたみたいだけど振り回してばかりだったもの、片付けもしないし。」
「熊だけにクマッタかな」
「ははは、なにそれおもしろーい」
 黒い豹はポツリと何かを呟いただけでもう喋ることは無かった。                                 

 了 
作品名:クマとヒョウの人形 作家名:。。