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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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ふたりのひみつ

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 動物園にめずらしい動物がやってきました。
 体の見かけはパンダのように黒いもようがありますが、他は白でなく、茶色でした。そして、耳と鼻はコアラそっくりで、目のまわりは黒くなっていました。ちょうど、パンダとコアラを合体させたような姿です。
 こんな珍獣が日本にいたのです。新聞やテレビは毎日大騒ぎするし、動物園は開園前から黒山の人だかりになりました。
 全国から募集して名前も決まりました。パコちゃんです。パコちゃんは子どもたちのアイドルになりました。
 でも、だんだんとひとりぼっちがつまらなくなりました。ここにいれば、ご飯は食べ放題だし、専用の遊び場もあります。飼育員のおじさんも優しくしてくれますが、なにか物足りなくなってしまったのです。
「あ〜あ、こんなはずじゃなかったのに」
 パコちゃんはつぶやきました。
 そんなある日、パコちゃんと同じ動物が動物園にやってきました。パコちゃんはびっくり。
「まさか?」
 仲間がくるのはうれしいはずなのに、パコちゃんは落ち着きません。
「よろしく。パコちゃん」
 ピコちゃんと名づけられたその女の子を、パコちゃんが怪しいものをみるような目つきでみたので、飼育員のおじさんは、パコちゃんが照れているのだと思いました。

 夜、みんなが寝静まってから、パコちゃんは満月をみながらため息をつきました。
「眠れないの?」
 ピコちゃんが声をかけてきました。
「君は、いったい誰なんだ」
「ふふ。わたし」
 ピコちゃんはくるりと宙返りをしました。
「ああ、きみはツネちゃん」
 ピコちゃんの正体はキツネだったのです。
「そうよ。二人で化かしあいっこしてるときに、タヌちゃんたら捕まっちゃうんだもの」
 パコちゃんも宙返りをしてタヌキの姿になりました。
「ひとりぼっちで、退屈だろうから、おんなじ動物に変身して捕まってあげたのよ」
 ツネちゃんがいいました。タヌちゃんは、
「ありがとう。でも、いいのかい? ここは囲いの中しか自由がないんだよ」
と言いました。
「なにいってるの。もとの姿に戻れば、いつでも出て行けるじゃない。飽きるまでよ」
 ツネちゃんは明るく言いました。
「あ、それもそうだね」
 タヌちゃんも笑いました。
 こうしてふたり(?)はもうちょっと動物園のアイドルでいることにしたのです。



 
作品名:ふたりのひみつ 作家名:せき あゆみ