ふたりのひみつ
体の見かけはパンダのように黒いもようがありますが、他は白でなく、茶色でした。そして、耳と鼻はコアラそっくりで、目のまわりは黒くなっていました。ちょうど、パンダとコアラを合体させたような姿です。
こんな珍獣が日本にいたのです。新聞やテレビは毎日大騒ぎするし、動物園は開園前から黒山の人だかりになりました。
全国から募集して名前も決まりました。パコちゃんです。パコちゃんは子どもたちのアイドルになりました。
でも、だんだんとひとりぼっちがつまらなくなりました。ここにいれば、ご飯は食べ放題だし、専用の遊び場もあります。飼育員のおじさんも優しくしてくれますが、なにか物足りなくなってしまったのです。
「あ〜あ、こんなはずじゃなかったのに」
パコちゃんはつぶやきました。
そんなある日、パコちゃんと同じ動物が動物園にやってきました。パコちゃんはびっくり。
「まさか?」
仲間がくるのはうれしいはずなのに、パコちゃんは落ち着きません。
「よろしく。パコちゃん」
ピコちゃんと名づけられたその女の子を、パコちゃんが怪しいものをみるような目つきでみたので、飼育員のおじさんは、パコちゃんが照れているのだと思いました。
夜、みんなが寝静まってから、パコちゃんは満月をみながらため息をつきました。
「眠れないの?」
ピコちゃんが声をかけてきました。
「君は、いったい誰なんだ」
「ふふ。わたし」
ピコちゃんはくるりと宙返りをしました。
「ああ、きみはツネちゃん」
ピコちゃんの正体はキツネだったのです。
「そうよ。二人で化かしあいっこしてるときに、タヌちゃんたら捕まっちゃうんだもの」
パコちゃんも宙返りをしてタヌキの姿になりました。
「ひとりぼっちで、退屈だろうから、おんなじ動物に変身して捕まってあげたのよ」
ツネちゃんがいいました。タヌちゃんは、
「ありがとう。でも、いいのかい? ここは囲いの中しか自由がないんだよ」
と言いました。
「なにいってるの。もとの姿に戻れば、いつでも出て行けるじゃない。飽きるまでよ」
ツネちゃんは明るく言いました。
「あ、それもそうだね」
タヌちゃんも笑いました。
こうしてふたり(?)はもうちょっと動物園のアイドルでいることにしたのです。