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VARIANTAS外伝・Impression

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 同時、スラスターを噴射して飛び出した私の機体は、一息で数十メートル上空に舞い上がる。
 次の瞬間、足元でトールハンマーの発砲炎が散り、数キロ先の敵機がバラバラに吹き飛んだ。
 175mmAPFSDSは、あらゆる機動装甲を撃破出来る、正に神の鉄槌。だが、その速射性能は極めて低い。それを補わなくてはいけないのは私だ。
 推力を調整しホバリング、ハンドグレネードを投げて撒き、素早く着地。と、同時に機動開始。敵機に向かって突撃。
 敵機が発砲。機体の機動性に物をいわせて回避。
 そうだ、私に食いつけ。そうすれば、一人でも多くの仲間が逃げられる。
 セミオートカノンを三点射。一機撃破。
 対装甲ミサイル接近、数4。フレア射出。3基を回避し、一基をAPSが迎撃。
 背後に敵機。だが、私は無視して正面の敵機をロックする。敵機が、至近距離で125mm砲を発砲。同時に、私は敵機に105mmAPDSを叩き込んで黙らせる。背後の敵機はオドポールが喰った。だが、125mmは私の機体の左肩を吹き飛ばした。しかも、今ので105mmは看板だ。
 だが、リロードしている暇は無い。
 105mmを捨てて腰部ラックから90mm短機関砲を抜き、回避機動を取りながら、一番近い敵機の下肢部へ集中砲火。T-72の装甲には、105mm口径以上の火砲が有効だが、90mmならば、近距離からの集中砲火。これしかない。
 1マガジンの半分を使って、敵機を転ばせる。
 元から転倒しない事を前提に設計された大重量機であるT-72は、コックピット周りの緩衝機構が甘い。パイロットは、転倒した衝撃で失神している筈だ。
 しかしその時、一発の砲弾が私の機体の膝を砕いた。
 同時に、オドポール機の周りに砲弾やロケットが落ち始める。火点を覚られたか、このままではオドポール機は砲弾の雨に打たれる事になる。
 私は、砲火の飛び交う中で機体に尻餅を突かせ、オドポールに言う。
「もういいオドポール! もう退避しろ!」
 だが。
「Нет!(いやだ!)」
 オドポールは逃げない。だがトールハンマーも、もう弾が少ない筈だ。
 オドポールへの砲撃精度が増していき、砲や単分子ナイフを構えた敵機が、押し寄せる。
「まだこんなに……」
 次々に押し寄せる敵機の群れを見て、存分に嬲り殺される自分の姿が目に浮かんだ。
 だがその時。
 突然、複数の敵機が、上空からの砲撃に貫かれて爆ぜた。
 レーダーに友軍機の反応、1。
 射線から推測し、上空を見上げる。
 夜の大気に、スラスター炎の煌めき。そして、火砲の発砲炎。
 その機体は、高度を急激に下げて地表を擦過し、瞬時に3機の敵機を撃破。一切の無駄を排除した戦闘機動により、まるで巨大なローラーが押し潰して行くかのように、敵機の群れが消えていく。
 いつの間にか砲声は止み、辺りには燃え上がる無数の敵機と、近づいてくる一機の機動装甲。気付けば、遠く地平線の上、敵後方部隊の方角でも火の手が上がっていた。
 私は思わず息を飲み、敵機を舐め尽くした元凶をまじまじと見る。
 見るからにシェイプアップされた、h1Dのカスタム機。右肩には尾の割れたキツネのエンブレム、そして左肩には、地獄の炎のエンブレム。私を見下ろすセンサーアイ。
 私は今、伝説と出逢った。
 ナインテールフォックス隊長。
 彼の、名前は……






「作戦空域に到達」
 突然の声が、私の意識を引き戻した。
 機体コックピットの中、薄暗い空気にモニターの光が通る。
 “私達”を載せた輸送機が、作戦領域であるカンパニア上空に到達したのだ。
 久しぶりに懐かしい夢を見た。初めて彼と出逢った日の事を。
 今なぜ、こんな夢を見たのかは解らないが、悪い気分ではなかった。
 彼は今も、どこかで戦っているのだろうか。
 私は……、やはり戦争が終っても、戦いを止めていない。
 身に染み付いた生き方を、変える事は難しい。
 生きることは戦う事。
 機体はもうすぐ、戦場へ投下される。
 生きることは闘う事。
 これが、私の戦争。



fin