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Confetti candy Love(英米)

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Confetti candy Love side America


俺はらしくなくも礼拝の日だとか上司の家に遊びに行くときとかに着る
少しだけフォーマルな服を着て、イギリスの家の前に立っていた。
俺自身、少し気合いを入れすぎなんじゃないかって思うけれど、今日は特別な日だからと
自分に言い聞かせてこの服を着てきた。
ネクタイは締めていないけど、襟のついたネイビーブルーのシャツに黒のスラックスと
いうスタイルはまるでイギリスみたいな恰好だ。
普段の俺ならばまず間違いなく着ない、そんな恰好をわざわざ選んだのには
ちょっとした理由がある。
それはたぶんくだらないと言えるようなことだけど、俺にとっては重要なことだ。

俺は今、イギリスと付き合っている。
彼と付き合い始めたのは三か月ほど前のことで、珍しくも彼が俺の家に遊びに
来ていた日のことだった。
俺の家だというのに、イギリスは俺以上に家のことを把握していて、食い終わったら
ゴミはゴミ箱に捨てろとか掃除機は一週間に一度はかけろと言いながら
テキパキと掃除をしていた。
俺といえば、また始まったよ。煩いおっさんだなあと顔にも口にも出して
お気に入りのソファーに寝転がって日本から貰った新作ゲームを攻略していた。
そうでもなければ、舞い上がりすぎた気分を抑えることなんてできなかった。
だって俺はイギリスのことが好きだったから。

イギリスのことを眉毛の太い小煩いおっさんだと思っているのは本当のことだ。
いつまでも俺を小さい子供のように扱うことに憤慨したのは数え切れないほどある。
けど、それ以上に俺はイギリスのことが好きだった。
こんな煩い眉毛のおっさんをどうして好きになったのだろうと思いはするけど
好きなものは好きなのだから仕方がない。
そう諦めを付けたのは10年くらい前だった。
それよりも、どうしたらこの見込みのない恋をなるべく穏やかに
終わらせることができるか。
そのことの方がよっぽど重要課題だった。
ヒーローはヒロインとハッピーエンドになるべきだと思うけど、イギリスは
ヒロインじゃないし、何よりもあの人は俺のことが嫌いなんだ。
今はわりと普通に接してくれているけど、独立後50年のイギリスは独立前の
彼が幻だったかのように俺に冷たかった。
彼はよく小さい頃の俺は可愛かったというけれど、俺に言わせてもらえば
彼だって昔の方が優しかったし、よく笑っていたと思う。
けれど、どんなにむかついてもそれを口にしないのは俺に負い目があるからだ。

イギリスが冷たくなった直接の原因は独立を遂げたことだった。
そのことに関しては俺は何の申し開きもしない。できない。
あれは絶対に必要なことだったし、あのまま民衆の不満を抑え込むことなんて
出来なかった。
なぜなら俺はアメリカだ。
国民性を反映し、時には俺自身の意思すら国民に曲げられる。
―――――あの時の俺はまだ幼かった。
背はイギリスに負けないくらいぐんぐん伸びたけれど、精神面では
ちっとも追いついていなかった。
だから身の内で荒れ狂う国民の感情に何度も振りまわされて
熱を出したことすらあった。
抑えよう、引きずられないようにしようと思っても、どんどん気持ちは
変化をしていった。
大好きなイギリスを少しずつ疎ましく思うように変化していく自分が悲しかった。
許せなかった。
だけれど、俺はどうすることもできなくて、そうして、民衆の熱さに引きずられるように
彼から独立する決意を固めていった。
もちろん独立を良しとしない声もあったけれど、その声はあまりにも小さくて
決意を叛意するには至らなかった。
そしてあの日、俺は彼に銃を向けた。
彼も俺に銃を向けた。
彼は撃てないと言っていたけれどもそれは俺も同じ気持ちだった。
独立する決意を決めたからって、彼への気持ちを捨ててしまったわけじゃない。
むしろ、思いは募るばかりでイギリスを想って涙した夜だってあった。
だけどその気持ちを伝えることは俺がアメリカ合衆国である以上、絶対にできないことで
だから俺は生意気な元弟であり続けた。
そんな彼と俺の関係が徹底的に変わったきっかけはあまりよく覚えていない。
たぶん彼の料理を貶めたとかそういうことだったと思う。
いつになく激怒したイギリスが手をあげたことからそれは始まったんだ。

「テメェ!!」
怒りに顔を真っ赤に染めたイギリスは手を大きく振り上げて俺の頬を平手で叩いた。
ぱしん、と叩かれた頬を抑えて俺は茫然とした。
プライベートでイギリスに頬を叩かれたのはじつは初めてのことだった。
彼と長い間袂を分かち合っていたときも決して手を上げられることだけはなかった。
じわり、と沁み込んでくる痛みよりも彼に手を挙げられたという事実の方が
よっぽど胸に痛かった。
イギリスに嫌われるように仕向けたのは自分なのに、いざこうして態度に示されると
まるで世界の終わりを迎えたかのように絶望的な気分だった。
そんな風に後悔しても、もう遅いというのに。

「ア、アメリカ・・・っ」
「え?」

イギリスに上擦った声で呼ばれて俺は初めて自分の頬を生温い液体が
伝っていることに気付いた。
ヒーローが泣くなんて情けないんだぞって思って、拭おうとしたらその手を
イギリスが掴んできた。
びっくりしてイギリスを見つめると彼は手を掴んでいない方の手にハンカチを握り
俺の涙を優しく拭い始めた。
その拭い方は俺がまだ英領アメリカだった頃とまったく同じやり方で
胸がギュッと痛くなった。
作品名:Confetti candy Love(英米) 作家名:ぽんたろう