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お題・飴
私の恋人の父親は、飴人間の飴おじさんだ。
何がどう飴おじさんなのかと言うと頭が直径50センチ位のまあるい飴で被われている。
飴はつるつるすべすべとしていて、薄い透き通ったピンク色で、その奥に見えるおじさんの顔もぼんやりとしているのだ。
私の恋人は母親似らしく飴人間ではない。
それを聞いた会社の友人などは皆「よかったね」などと言う。
けれど私は、内心少しがっかりしていた。
なぜなら飴が大好きだからだ。
でも、それを言ったら友人は皆怪訝な顔をするだろうし、恋人もいい気はしないだろう。
喜ぶのは飴おじさんと飴おじさんの奥さん、つまりは恋人の母親くらいだ。
私は恋人の実家に行く度に…そして自分の飴玉をぴかぴかとタオルで磨く飴おじさんを見る度に…いつも悔しさでこっそりと溜め息をついていた。
だからこそ、私は今心底喜んでいるのだ。
そりゃもう喜んでいる。
もう恋人は恋人でない。
立派な父親になったのだ。
そして私の膝の上には、まんまるいすやすやと寝息をたてる綺麗な薄紫の飴息子がいる。
わーいわーいと思いながら、私はこっそりと飴息子を舐めた。