意識の混濁
わたしのなかに、声が響く。愛すべき、空想の声が響いている。
そういうものが一般的なひとびとに備わっているかはわからないが、わたしの意識の中にはそれがあった。
幼い頃から、自分が思考する意識とは分離して、もうひとつの意識が存在しているように感じられるのだ。
それはわたしに、音声となって流れ込む。
今はそれを仮に「第2意識」と呼ぶことにしよう。
それは、わたしの人生の中でさまざまに役割を変えてきた。
幼い頃は物語の読み手であったし、すこし大きくなると話し相手にもなってくれた。
身体を患っているわたしは人々の好奇の視線を嫌い、騒がしい会話を疎んだので、自然いつもひとりを好んでいた。
それでも孤独なのは怖かった。寂しかった。誰かひとりでいいから、「特別なひと」が欲しかった。