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心と兵器と魔法と人 プロローグ

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それは今からだいぶ昔の話。
まだ世界中で戦争が絶えない頃。
人は私利私欲の限りを尽くし、地球の命は本来の寿命の1千万分の1にまで短くなっていた。
それでも人々は戦争を止めなかった。
多くの血が流れようが、多くの涙が流れようが、彼らにはどうでも良かったのだ。
そんな中、ある科学者が居た。
人に自分の理想を理解されない為に、人に追放され、人のいない辺境に暮す男だった。
しかし、彼は優秀で、天才だった。
天才過ぎて、人が考えない思想をしてしまっただけだった。
彼は辺境に飛ばされようが、構わず研究を続け、遂に作ってしまった。
「人の形をした兵器」を。
初め彼は一人の寂しさから「子供姿のアンドロイド」を作ろうと考えた。
親が子供を作る感覚で。
子供と共に自分の思想を分かち合える為に。
当然だが、作られた「子供姿のアンドロイド」は、子供の姿をしていた。
彼はそれに「バルフロート・アベルレイン」と名づけた。
勿論、子供だと思っているのだから名前をつけるのは当たり前だった。
彼の子供だと分かるように、ファミリーネームは彼と同じだった。
しかし、彼は作った子供を愛しすぎた。
彼は自分がひ弱な存在だと知っていた。
だから自分ひとりでは守れないと思っていた。
故に彼は、子供に兵器を取り付けた。
子供が一人でも身を守れるように。
一つ一つが人を大量に殺せる程の威力を持った兵器を。
彼はそれが子供にとって最良の選択だと思った。
しかし、彼を追放した国の軍人が子供を奪ってしまった。
子供は無表情で何も言わず連れて行かれた。
彼は悲しかった。
でも諦め切れず、再び子供を作った。
今度は少し大きい子供を作った。
青年と呼ばれる位の子供だ。
彼は名前だけではなく、ファミリーネームも考えた。
また取られるなら、作った事がバレない様にと。
でもまた連れて行かれた。
連れて行く軍人は笑いながら、
「お前の作った玩具はよく人を殺す為に働いているぞ。」
と言った。
彼は絶望でいっぱいになった。
自分の子供が人殺しの兵器になっていたのだ。
でも、それでも彼は子供を作り続けた。
次は場所を変え、かつての自分の名前も変えて。
どんな形でも、子供が欲しかったのである。
それでも彼らは見つけて子供を攫った。
遂に彼は12番目の子供が連れて行かれてしまった。
子供が欲しかった彼はもう限界だった。
そんな時に戦争が突然終わった。
彼の手元には13番目の子供がいた。
金色の髪をした青眼の青年だった。
彼は最後の希望になるかも知れない13番目の子供に一言言うと、頑丈なカプセルの中に子供を眠らせた。
いつか来るその時まで。
彼は他の子供を捜した。
子供達はすぐ見つかった。
しかし、それを見た彼は驚いた。
人の血でいっぱいの彼らは屍の真ん中で立っていたのだ。
子供達は彼を覚えていた。
嬉しそうに笑って「オトウサン」と言った。
彼は子供達をカプセルに眠らせた。
カプセルは世界の彼方此方に強固な建物を作ってその中にカプセルを置いた。
彼はその後、大災厄に襲われ命を落とした。
最後の希望が目覚めるのは、それから約500年も後の事だった。