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一週間の末

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 月曜日、僕はすっきりと目覚めた。いつになく爽やかな目覚めだった。体が軽く、いつものような纏わりつく倦怠感が皆無だったのだ。これは一体どうしたことだろうか。不思議に思いはしたが、調子が良いということは漏れなく幸運なことであるはずなので、あまり深くは考え込まないことにした。
 いつもの癖でテレビの電源を入れてみると、これまたいつもの世相に反することなく、誰が誰を殺しただとか、どこどこが火事になっただとか、強盗だとか自殺だとか、バリエーションに富んだニュースのラインナップだった。いつもの僕であったなら、瞬時に電源を入れたことを悔やみ下唇を噛むだろうに、何故だかそんな気も起こらない。寧ろその逆で、ああ、こんな不幸な出来事が、僕の身に降りかからなくてよかったと、自分の無事を実感して安堵のため息をついたほどだった。
 学校に行くと、いつものようにみんなは僕の方を見ない。話しかけようともしない。完全に存在を無視されている。それでも、僕は普段のように一喜一憂して神経をすり減らすこともなかった。実に穏やかで心地良い波に揺られていた。愉快ですらあった。ずっとずっと、こんな日々が続けばいいと願いさえした。
 火曜日も、水曜日も、木曜だって金曜だって土曜だって、僕は一人だ。常に一人だ。それが悲しくもなければ、憂鬱でもないのだ。まるで何かから解放されたような、すがすがしく爽快な気分だった。その原因が、僕にはずっと分からないのだけれども、まあいいや、と諦めにも似た気持ちだった。
 日曜日、またいつものように目覚めると、長い間留守にしていた両親が戻ってきていた。久々だったので挨拶でもしようと思ったが、二人ともやけにめそめそと湿っぽく泣いているので、声をかけ損なってしまった。二人が首を揃えて押し黙っている暗い和室、祖父の遺影が飾られている横にはいつの間にか、新しい遺影が増えている。真っ赤に汚れたシーツはもう乾ききってしまって、僕の心臓に刺さった包丁はもう痛みを伝えない。
 ちょうど一週間前に見た自殺のニュースが何故だかずっと、僕の脳内をぐるぐると巡って止まらなかった。
 僕はもう腹も減らない。
作品名:一週間の末 作家名:yueko