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夢色失色(番外編)1

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【 消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えてしまえばいいのに。
削除削除削除搾取搾取、もうみんないらない  】




夢色失色(番外編1)





「特例だ」
「はあ?何、特例とか知らないんだけど私関係ないし」
「任務地は日本。依頼人は十八歳の少年だ」
「………任務内容は」
「少年はどうやら友人関係に悩んでいるようだ。受験を控えている難関私立の学生だから、あまりやらかしてくれるなよ」
「だから!任務内容はなんなのって聞いてるの!」
「任務内容はただ一つ。


少年の友人関係を、場合によっては”制裁”を含めて清く正すことだ」
「…ふうん」
「お前には、明日から少年の通う学校で辞任した化学教師の代理として勤めてもらうことになっている。…構わないな?」
「…今更文句言ったってどうにもならないでしょ」
「分かってるじゃないか」
「…うっざ」
「なら、仕度をして空港に急げ」
「自家用チャーター持ってるくせに何で空港までいかなくちゃなんないの!」
「経費削減だ」
「…最低…。…もういいよ、こんな面倒な任務押し付けやがって」
「ああ、そうだ。言い忘れていたが、結城君」
「何だよ!」


「その任務、期間は約一年だ」







「はあああ???」









***








春。ストライプシャツにタイトスカート、そして白衣を羽織った格好で私は教室へと急いだ。嗚呼、面倒だ。至極面倒だ。
面倒だけれど、はじめが肝心だと何度も桐崎に注意されたし、養成所でもやる気のなさが滲み出ていると何度も注意を受けた。
「…はあ」
私は小さくため息を吐いて、3-Bとプレートのさげられた教室の扉に、手をかけた。



難関私立といっても、高校生らしいものじゃないか。
ざわざわとざわめいていた教室中が少しの喋り声を残して静かになる。
自分の高校時代を思い返しながら、私は教卓についた。


「はい、こんにちは。
今日から皆に化学を教える結城翠です。
皆はもう三年生で受験も控えているので、少しの間、一年生と二年生の復習をざっとやって、暫くしたら本格的な入試問題に挑戦していくつもりです。
分からないところがあったら、一つ一つ解決していけるように頑張ろう」


一思いにそういいきって、私は生徒達の表情を見る。
……いた。
横へ横へと眺めていくと、社長に渡された写真と同じ顔の少年を見つけた。
あの少年が依頼人か…。


「先生」
「…何かな?」

依頼人から視線を逸らし、私を呼んだ生徒を見る。厚いメガネをかけた女生徒だ。


「先生は、いじめって容認しますか」
「…は?」
「だから、いじめです。最初に言っておきますけど、このクラスにはいじめが存在しています」
「…それで?」
「いじめのターゲットは”藤崎稜(ふじさきりょう)”。加害者は彼を除くクラスメイト全員。でもいじめには本質的な理由がある。彼がクラスメイトの悪口を言ったんです。だから、彼は二週間前から、いじめのターゲットになっています」
「……あのねえ、飯田さん」

手元の名簿を見てため息を吐く。


「いじめって、容認されていいものじゃないのよ」
(私は本当の教師じゃないから、どうにも出来ないけれど)
「本質的な理由?理由があったらクラスメイトを苛めていいの?」
(どんな理由があっても、誰かを傷つける権利はてめえらにはねえんだよ)
「そんなわけ、ないよね?」
(っていうかこいつら何でそんなこといったんだ?)


「…そうですか…。じゃあ、先生。最後にもう一つ質問が」
「何?」


「  先生 は 人を殺したことって   ありますか?   」


(…は、何こいつら)
恐ろしく冷たい目をした女性徒、飯田唯から目を逸らして、依頼人の少年を見つめる。
依頼人の名前は、藤崎稜。飯田が言った、いじめのターゲットだった。


「…そうだねえ」
暫く間をおいて、私は口を開いた。



「そんな事があったら、私は今ここにはいないんじゃないかなあ飯田さん」
(でもまあ……人を死においやったことなら何度もありますよ、学級委員長さん)


「…ふうん」
飯田はそういって、席についた。





(これは……何がおかしいって、あんた)
(もしかしたら、依頼人の友人関係がおかしいとかじゃなくて、)
(クラス、はては学校全体までがおかしいんじゃないの…?)



「……まあ、面白いからいいや」
私はそう呟いて、黒板を振り返った。


作品名:夢色失色(番外編)1 作家名:紫水