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でろんとした雨の降る梅雨。

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しっとりとした雨、というよりはでろんとした雨だった。
「何書いてるの?」
 横から雪香が声をかけてきた。
「日記でも書こうかなと」
 炬燵にもテーブルにもなる机の上で僕は日記帳を広げていた。
「ブログとかじゃダメなの?」
「うーん、ブログじゃなくて日記を書きたいんだよな」
「二つのどこが違うの?」
 うーん。改めてそう訊かれるとハッキリとした解答を出しづらい。雪香は僕をじっと見た。
「なんというかな。アナログとデジタルの差かな」
「別にデジタルでもいいんじゃない?」
 確かになー、と納得はしそうだったがなんか違うんだよなとも思った。僕は思いを言葉にすることの難しさを実感した。
「うーん、というよりは公開か非公開の差かなー」
「ならメモ帳とかワードパッドでも使えばいいじゃん」
 再び首を縦に振りそうになるが、それをこらえる。やっぱり違うんだよ。なんていうかなー、あれだよ。
「違うんだよ。根本的に違う」
「どこが? 文学的にわかりやす言おうよ、東京文学大学生二年」
 そこを突かれると痛い。東京文学大学の生徒と言っても僕は、日本史専攻だしな・・・・・・。本音を言ってしまえば文学にはそこまで興味が無いんだけれども。
「ていうかな! ぶっちゃけ俺、文学に興味無いし!」
 僕は、本音をぶちまけて勢いよく立ちあがる。
「おうよ! 私もよ! 日本史以外、理解する気ありませんが!」
 雪香も僕と同じように立ち上がって言った、というよりも叫んだに近いかもしれない。
「ていうかなんだよ、でろんとした雨って!」
「んー、やっぱりおかしいかな」
 僕はそう言って座り込む。
「でも、私たち日本史専攻だしね・・・・・・」
 雪香も腰を下ろして体操座りをする。
「でも日本一の文系大学なんだよなー」
「いいじゃん」
「だな」
 なんだか、うやむやになって会話が終了してしまったが雪香も楽しそうだったので良かったのかな。
「雪香も日記つけてみる?」
「心のメモリーに保存しておくよ」
 なんだよそれ、と思いながら僕は再び日記帳に向かった。