ワカラナイひと
この晩もそうだった。夕食後、窓辺のチェアで本を読んでいると、夕食の片づけを終えた男が、傍に寄ってきて言った。
「考えずにインスピレーションで答えて。」
彼はそう言うと私の返事も待たず矢継ぎ早に言った。
「1・宝くじ買ったことある?」
「ない。」
「2・サッカーと野球、みるならどっち?」
「クリケット。」
「3・ソフトクリームとアイスクリーム、どっちがすき?」
「どっちも。」
「4・チューリップの花言葉は?」
「私にキスを。」
「5・ハンバーグと牛丼、どっちがすき?」
「ものによる。」
「6・1週間でいちばんスキな曜日は?」
「月曜日。」
「7・スペイン語とフランス語、どっちがトクイ?」
「フランス語。」
「8・枕はそばがら派?低反発派?」
「低反発。」
「9・月と火星、行きたいのは?」
「月。」
「10・ぼくとおじいさん、どっちがすき?」
「祖父。」
途切れた質問に顔を上げると、彼は失望もあらわに私をみていた。
「……キミはまるで、わからない男だな。」
「もしかしなくても、キミって、空気の読めない人だよね。」
彼はそんな言葉で私を責めるけれど、
なぜそんな当たり前のことに、彼がそこまでがっかり出来るのか、
私には、どうしても、リカイができない。
end.