小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

charcoal 2

INDEX|1ページ/1ページ|

 
セブンスターを吸う男にろくな奴はいないと隆志は思う。語学の安田はつれない彼女の穴埋めを他の女にさせているしゼミの保坂は何人もの女を囲うタラシだ。他にもサークルの賢也やらバイト先の殿村やら、隆志の知る同じ煙草を吸う男はまるで駄目な奴ばかりだ。
 隆志の吸う煙草も、セブンスターのチャコールフィルターだ。
 初めてセックスをしたのは中学生の頃だ。相手は同じクラスの少女で、自分達以外誰もいない彼女の家で酷く緊張したのを覚えてる。それ以外にも何人かの女と付き合って、そのたびセックスをした。10代の男ならそんなものだと思うし、彼女以外の女としたことはないのだから健全だと思っている。少なくともほんの数ヶ月前までは。
 隆志に新しい彼女ができたのは2年振りのことだった。心の底から好きで好きで、想いは今でも変わっていない。にも拘らず、付き合い始めてから僅か1ヵ月後、隆志は彼女とは別の人間と寝ていた。それも、同級生の男と。
 不足があったわけではない。寧ろ彼女のことは結婚したいと本気で思うくらい好きだった。それなのに何かが胸の内にくすぶっていて、それを彼女にぶつけたくなかった。どうすればいいのか考えて考えて、目に留まったのがあの男だった。
 決して女らしい方ではなかった。体つきはやや華奢と言えないこともなかったが、最低限の筋肉はついていたし細く引き締まり、柔らかさとはほど遠かった。背だってひょろりと高い。なのにその姿を見た途端どうにかしてしまいたいという衝動に駆られたのだ。
 飲み会で酔ったところを、心配だから面倒みると言って自分の下宿に連れ込んだ。ほとんど意識のない男の服を剥ぎ取り、身体に触れた。嫌悪感は不思議なくらいなかった。それよりも、早く壊したくてどうしようもなかった。
 殴った。蹴った。身体の奥を探ってこじ開け、壊すためと思えば性器を弄って吐精させるのだって厭わなかった。手段を問おうとは思わなかった。ただ、目の前の男をぼろぼろにできるのなら、なんだって。
 どうしてそんな風に思うのか。それすらわからないまま、隆志は繰り返し男を壊した。最初こそ抵抗していたけれど、何度も何度も手酷くするうちにぴくりとも反応しなくなった。つまらなくなったとは思ったけれど度々繰り返した。細い身体には痣が増えた。それを見て、増やすたびに胸の奥のくすぶりが静まって行くのを感じた。
 理由のわからぬ不毛な関係は、たっぷり2ヵ月は続いた。隆志がやめたわけでもなく、相手が拒んだわけでもない。消えたのだ。隆志の目の前からきれいさっぱりと。
 サークル用の活動室で会わなくなった。何かがおかしいと思っていたら全員集まるはずの場ですら姿を見ない。気になってしまって探した。学部の建物を隅から隅まで、購買、学食、学内の本屋。全部探して、不毛なことをしていると気付いてやめた。どうして探しているのかさえわからなくなってしまって。
 大学を辞めたらしい、とは後から聞いたことだった。深夜のベッドの中で彼女に聞いた。一瞬だけ耳を疑ったけれど、やっぱりと思った部分も大きかった。心のどこかでそんな気がしていた。
 胸の内のくすぶりはいまだ止まない。むしろ男を失ったことで余計酷くなったようにも思える。理由はもう、わからない。わかろうとも誰にぶつけようとも思わない。もう、何も。
 隆志は今まで通り彼女と付き合い、セックスして、男が消える前と同じように過ごしている。ただ時々、煙草のフィルターを噛み締めながら思うのだ。セブンスターチャコールフィルターを吸っている男にろくな奴はいないと。
作品名:charcoal 2 作家名:霧谷眞也