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タクシーの運転手 第二回

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「あなたのような綺麗な方だったら、そりゃ保健室に行きたくなりますよ」
 後ろをちらっと向いて、笑いながら彼は言った。
「口八丁ですね」
 まんざらでもないといった様子で微笑んだ。
「確かに、そういう人たちが大半なのかもしれないですね。だって、来るのはだいたい男子ばっかり」
 うんうんと彼は頷く。彼が頷き始めたら、聞き役に転換するという意思表示だ。
「私自身もちょっと期待しちゃいますよね。やっぱかっこいい男子がきてくれたほうがうれしいし、不細工な男子が来たら残念に思うし」
 ほぉ、と彼は相槌をうつ。
「今私が担当しているのは高校なんですけど、高校生にもなると男子はマセてきますからね。電話番号とかメアドとか聞いてきて、放課後連絡してきたりするんですよ」
 そんなことが、と彼は相槌をうつ。
「気分がいいときは、その誘いに乗っちゃいますね。なんか別に悪くないなって」
 そういうもんですか、と彼は相槌をうつ。
「最近は、草食系も好みだけど、がっつり来る子も好きですね。精一杯大人ぶって、低い声で迫ってくるの。まぁガキのやることなんで、かわいいもんですよね」
 ははっと笑いながら彼女は言う。
「まぁこんな感じだから、私女子受けは悪いんですよね。しょうがないっちゃしょうがないんですけど」
 少しトーンを低くして言った。
「それは仕方ないですね。女性の嫉妬は怖いものです」
「まったくその通りです」
「何はともあれ、いろいろな生徒に必要とされていいじゃないですか。羨ましいです」
「ふふっ、そういう見方もありますよね」
 舌を出して彼女は言う。
「見方よってだいぶ変わってきますからね」
 信号が青に変わった。
「まぁ私今の仕事は好きです。あ、男子といちゃつくのが好きっていうんじゃなくて。昔は小学校を担当したこともあるし。要するに子どもが好きなんですね」
「それはいいことですね。好きこそものの上手なれ、と言いますし。それなら安泰ですね。僕もいろいろな仕事をやってきましたけど、今の仕事が一番しっくりきてます」
「ですね」
 目を細めて彼女は答えた。
 話が一段落着いて、沈黙が流れた。彼女はこれ以上語ることはなかった。
「着きましたね。ここでよろしいですか?」
「はい、ここで降ろしてください」
「わかりました、お疲れ様でした」
「どうも、お話楽しかったです」
「僕も楽しめました」
「では」
 彼女は車から降りて、立ち去っていった。
「いやー、それにしてもエロい体つきの女性だったな」
 そして再び彼の車は走り出す。
 どこまでもどこまでも。