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オアシス

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「つまり私達は彼のなんだったのよ?」

苛立たしげに叫ぶA。

白い部屋。

男の死体。

死体を取り囲む女たち。

「今更そんなことを言っても遅いわ。」

嫌に冷静なB。

水色のワンピース。

CとD。

こまかなパーマ。

ぴたりとしたスーツ。

険しい視線。

「…私は…私は当然の報いだとは思えない。…思えば、楽になれることは知ってるわ。それでも私は確かに彼を愛してたのよ。彼が私を好きなのと同じくらい。彼があなたたちを好きなのと同じくらい。…いえ、もしかしたらもっとそれ以上に。」

冷たい声。

白い肌。

ギンガムチェックのシャツ。

「あなたはそう言いますが、私はそう思えません。…彼は果たして本当に私たちを愛していたのでしょうか?それならばなぜ私たちは今彼をぐるりと取り囲んでいるのです?なぜ彼は目を閉じているのです?…かりにもし彼が本当に私たちを愛していたとしても、果たしてそれは均等な愛なのでしょうか?人は同時に5人もの人間を愛せるものなのでしょうか?…私にはわかりません。」

Aの乱入。

「つまり私達は彼のなんだったのよ?」

長い沈黙。







誰かの溜め息。






赤いパンプス。

「オアシス」

「一滴ではけして喉を潤すことはできない」

「そして一滴でも欠けてはいけない」

「オアシス」

Eの微笑。


作品名:オアシス 作家名:川口暁