ほかほかする冬。
ふと目をやると、カーテンの隙間からはオレンジ色の朝陽が差し込んでいた。外では雀が鳴いて朝を告げている、のかもしれない。
というのも僕は今、炬燵に入ってヘッドフォンを付けてiPodに入っているArt PepperのStompin' At The Savoyを聴いていたからだ。
そして、向い合せにいる雪香が必死にレポートを書いている。
「だから源頼光は・・・・・・そして・・・・・・」
ぶつぶつと独り言を呪文のように呟きながら、ボールペンを走らせている。
喫茶店から粉雪が舞う中を雪香は帰って来てから、ずっとこの調子だ。
そして僕が寝ようとしておやすみ、と声をかけると。
「ダメ。寝ちゃダメ」
と雪香は、僕の服を思いっきり引っ張った。
「なんで。明日月曜日だし早く寝たいんだけど。俺が寝て何か困る?」
雪香は顔を桃色にして、目を逸らしながら言った。
「さみしい」
なら仕方ない、という事で僕は雪香の徹夜に付き添った。そして今の雪香は、髪の毛をボサボサにして必死にレポートに向かっている。
僕はそれを雑誌を読みつつ、ヘッドフォンを付けて音楽を聴ききながら見守った。
「ぬぅうおおおおお! 終わったぁああ・・・・・・」
雪香はガッツポーズをして、そのまま仰向けになって後ろへ倒れこんだ。
「お疲れ。これからはもっと早くやっときなよ」
「それは彼女に対して言う言葉じゃないでしょ」
ならこういう時、何を言えばいいんだ。
「好きだよ」
「え、あ・・・・・・うん」
雪香はしばらく黙ってから、体を起して再び口を開く。
「いや、頷いちゃったけど違うよ! なんか励ましの言葉!」
今度は頬を林檎のようにして、言った。
炬燵に入りっぱなしで暑いのかな。
「・・・・・・うん、良く頑張った」
そう言って僕は、雪香の頭を撫でた。
「ありがとう」
そう言って雪香は僕に抱きつく。
なんだ、温かいじゃないか。