ほっとする冬。
外では道路が白い絨毯を敷いて、粉雪が舞っていた。
カウンターの中にいる僕は立ってコーヒーカップを磨いている。
そして、カウンター席に座ってエスプレッソを飲みながらレポートを書いているのは雪香だ。
「あああああ、もう。知らんわこんなの」
雪香は髪を掻き毟りながら、そう言ってうつぶせになる。
「何のレポート?」
うつぶせになっていた雪香が顔をあげて答える。
「あの源頼光のフィールドワークのレポート」
「終わってなかったのかよ。なんだかんだで、提出期間は一か月くらいあったじゃん」
「だって一か月もあったら忘れるし・・・・・・」
「じゃあ、俺と一緒に行った時にすぐ書いちゃえばよかったじゃん」
僕の言葉に雪香は深いため息をつく。
「まぁ、時間はあるよ」
適当な慰めの言葉をかけながら僕は自分の飲むコーヒーをマイカップに入れる。
「だって提出期限、明日じゃん・・・・・・。今からレポート用紙20枚とか・・・・・・」
僕はコーヒーに砂糖を入れて、ミルクを入れながら答える。
「提出期限っていうのは、明日が締め切りじゃない。明日の受講開始時までが締め切りなんだよ」
「おぉ・・・・・・さすが修羅場の数が違うな、留年生」
「まぁ、僕ぐらいになるとレポートなんて痛くもないね」
留年生という言葉をさらっと流して、僕はコーヒーを飲む。
やっぱり挽き方が違うだけで、コーヒーってこんなに美味しくなるものなんだな。
家ではずっとインスタントだったけど、これから頑張って良いコーヒーメーカーを買ってみようかな。
「なぁ、今度コーヒーメーカーを・・・・・・」
買おうか、と言おうと思ったら雪香はうつぶせになって寝ていた。
僕は着ていたギャルソンを雪香にかけて、コーヒーを飲んだ。
店内にはジャズが流れていた。