羊のフラスコ
「先輩…なんですかこれ」「あなたのための薬」
大丈夫!健康に害は与えないから絶対に!だから、さあ、のんでのんでのんで!のんで!と、言いよられてしまっては後輩としては断ることもできず、ええいままよと目をつぶってごくりと飲み干すと、小児用風邪シロップのような味がした。
吐くほど不味くも、刺激物でもない、身体に異常もなさそうだ。単なる睡眠誘導薬か、それですらなくプラシーボ的なものかもしれない。少し安心して目を開けると、目をつぶるまで存在しなかった鮮やかな色彩のものが通り過ぎた。
ひつじがいっぴき。
机の上を親指位の、先ほどの薬と同じ色をした黄緑色の羊がとことこ右から左へ、そして僕の置いたフラスコをよじ登り中にぽとんとおっこちる。そして次の羊が右からひょいと現れるのだ。
ひつじがにひき。
目をこすって確認してみるが、黄緑の羊たちは消えずにフラスコにたまっていくばかり。呆然とする僕に、実験の成功を確信した先輩がにやにやとした笑みを浮かべながらいう。どう?あなたのための薬でしょう?
「で、先輩 ちっとも眠くならないんですが?」
「え? そういう作用については、もとより対応予定はありません」
今日のお題は『羊』『フラスコ』『未対応』です。 http://shindanmaker.com/14509 #twnv_3