金木犀の魔法 序
夢は何だ?と聞かれて、はっきりと答えられない。
人に嫌われるのは嫌で人に合わせて生きてきた。
マニュアルがないと、途端にどうしたらいいかわからなくなる。
だから、小さい頃に見ていたアニメや物語に小説の登場人物や非科学的なものにはとても惹かれた。
実はそれは今でも変わらない。
魔法や非現実的なことにあこがれている。でも、それは現実の世界ではただの夢見がち。大人たちには受け入れられない。
夢を大切にしろ、というのに。
自分の信じたことをやれ、と大人は言うのに。
どうしてそういうものを信じているとバカにされるのだろうか。卑下されるのだろうか。
それならば私は夢なんて見ないで、機械的に、けれどもその日その時その調子で生きていく。
夢を見なくても、現実で些細でも楽しければ何でもいいのだ。
小さく心にそう誓った。
受験戦争真っただ中、中学三年生の十二月のことだった。