小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

景観

INDEX|1ページ/1ページ|

 

 「何見てんの?」
 「ん? ああ、月をね。いつになくきれいに見えるもんだからさ」
 「ほんとだ。まんまるくなってる」
 「この月もあと十数年もすれば今とは違った眺めになっちゃうんだな」
 「仕方ないじゃん。月面基地建てなきゃ人が溢れちゃうんだし」
 「そうなんだけどさ。出来れば今の眺めのままでいて欲しいもんじゃん」
 「……もしかして景観破壊反対運動に参加してたりする?」
 「いや、さすがにあそこまでやるような運動には参加してないよ。でも運動に参加する人の気持ちは分かるけどね。今の地球は人が増えすぎてすし詰め状態だし、どこ行っても高層ビルに覆われてるし。月ぐらいしか閉塞感をぬぐう物が無いからね」
 「確かに、ただでさえ人が多いのに、月まで人で覆われたらおかしくなっちゃいそう」
 「でもいつからだったっけ。人類が月に移住するようになったのって」
 「三百年ぐらい前じゃなかったっけ。その時はまだそれほど人口増えてなかったと思うけど」
 「当時の人は月面に移住させなきゃいけないほど人が増えるとは思ってなかったんだろうな」
 「たしか地球の人に配慮して月の裏側から基地建てたんだよね。それなのにもう裏側が埋め尽くされてる。すごいよね」
 「このまま月も人で埋まったらどうすんだろ」
 「噂だと火星移住計画なんてのがあるらしいよ」
 「どこまで行くんだろ? 人類って」
 「さあ……あ、よく見たらさ、月の下の方ちょこっと基地っぽいのが見えない?」
 「え? あ、ほんとだ。もう地球から見えるようになってんのか。最近運動が激しいと思ってたけどそのせいか」
 「でも、ああしていろんな事して景観破壊だなんていってるけどさ、月に住んでる人と比べたら私たち地球に住んでる人はまだましなのかもね」
 「なんで?」
 「人で汚れきった地球を見なくてすんでるんだから」
作品名:景観 作家名:ト部泰史