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フレンドボーイ42
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novelistID. 608
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三芳国久・都落ちの師走

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111号室でパート生活(さすがに30代でフリーターというのも不味いだろうと)をしている三芳はかつては普通の正社員であった。かつては、というと語弊が出るだろうか?少なくとも2010年12月上旬までは正社員だった。そしてそのまま解雇され、今に至る。
 師走は春待月(はるまちづき)で、春(旧暦)を控えているから春待月。
 春を迎える…そういう気分ではなかった。自分だけ4月になってもずるずる栄華の過去を引きずるに決まっている。このアパートにさっさと引っ越してきて、深く溜め息をつく。引っ越してきたものとして、挨拶の一つほどしていこうかとたちあがって、持っていくもののないことに気付いた。そのまま座って思案し、思いついてスーパーに向かう。そしてカップラーメンを大量に買い込んだ。とりあえず行状は察してくれたらしい。
 さて、赤羽という住民のドアをノックしても誰も出てこない。
 「今日は少し仕事で遅くまで赤羽さん帰ってきませんよ」
 「…えーと、あなたは」
 「申し遅れました。白城黒友と申します」

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 「びっくりされましたか」
 彼の部屋はパソコンデスクとデスクトップ・ノート・FAX付き複合機の他は生活感のある代物がなかった。まあ押し入れの中にタオルやら服やら小さめの冷蔵庫やらは入っているのかもしれないが(何故か一部の部屋の押し入れの中にはコンセントがあるのだ)、料理などはしないのか?
 「このアパートの住民で一番普通なのは赤羽さんだったんですが、今や三芳さんが一番ですね」
 「はあ」
 「このアパートの住民は結構変わり者だらけなんですよ。なかには、怪しげなことをしている人もいらっしゃって…たぶん最初は落ち着かれないと思います」
 白木はそこで一度言葉を切る。押し入れの中にあるものを取り出してストローをねじ込む。
 その彼が持つ紙パックは、紅茶豆乳だった。
 「どうぞ」
 彼が別の紅茶豆乳を差し出した。