だいなまいと そのご
そして、不思議なことに、俺は、痛かったはずなのに、満足していた。今までだって、女とセックスはやっていたが、こんなに充足した気分にはならなかった。気持ちがいいというのと、溢れるような充足する気分とは違うのだと理解した。
・・・花月やからなんやろうなあ・・・・なんでやろ?・・・・
身体中、ギシギシと油の切れた機械みたいに感じているし、あそこも痛いし、なんか泣きすぎて、目も痛いのに、それだけではない、何かがあって、俺は満足していた。
「ずっと、これでええわ。俺、こっちのほうがええみたいや。」
「そうか、気が変わったら言うてくれ。」
誰かをこうやって、完全に受け入れたことはなかったんだろうと思う。花月だけが、そこへ侵入してしまったから、気持ちいいのではない、何かの気持ちを、俺に与えてくれた。
「・・・俺、おまえの嫁に就職してよかったような気がする・・・・」
疲れ果てて眠りに引き摺りこまれそうになって、言いたいことだけ言った。
「当たり前じゃっっ。」
そんな怒鳴り声みたいに声が、耳に聞こえて、俺は笑ったまま、眠った。
・・・すっごく温かいな・・・・
名前の知らない感情が溢れていて、とても心地よかった。花月は、俺が今まで知らなかったものを、いろいろとくれたんだろう。どんなものなのか、実際には判らない。けど、いいものなんだろう。
作品名:だいなまいと そのご 作家名:篠義