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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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よしとくんとほしいプレゼント

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 よしとくんがみかんを食べながら、窓の外のポチをみています。ポチは忙しい訳でもないだろうに庭を駆け回っているのはよしとくんの妹のあいりちゃんがポチを追っかけ回しているからです。よしとくんも混ざりたいらしく、みかんを食べ終わるとそのまま手も洗わずに手袋をはめて庭にでます。
 それを見ながら北川は陰鬱な嘆息をしました。よしとくんはサンタさんへの手紙を書きました。彼は、白をアクセントにしながらも至極インパクトのある紅い服(コカ・コーラ社が自社のイメージカラーを利用しただけですが)に身を包んで、陽気に笑っている鬱蒼とした髭の持ち主が、「陸上動物」トナカイの力を動力とした「半重力」のそりに乗って「靴下」にプレゼントを入れるために「不法侵入」するというのを信仰しています。まあまだ年も年長さんで、幼稚園ではおにいさんおねえさんと言われる彼らも、来年は一番年下の一年生で、友達が百人できるかな、と非現実な幻想を抱く頃です。…まさか(「いちねんせいになったら」を作詞した)まど・みちおさんもそれができるとは思っていないでしょう。でもどこかに現実を解離した希望…そしてやがて世界協調へ…まあ(将軍様の治める北の国がある限り)無理ですが、そういうことを思っていたのでしょうか?…とにかくそんな年頃の男の子に聖ニコラスは死んだのだと誰が言えるでしょう。北川は、よしとくんの父親であるが故に父親たるもののつとめ…夢(=幻想)は壊さないという方針でいるわけです。
 妹のあいりちゃんはぬいぐるみを欲しがりました。そんなもの、マニアでもないあいりちゃんですから、そんなに懐は痛みません。
 しかし、この不況下で、ポケモンのブラックとホワイトを両方買うのはさすがにきついようです(4800円×2バージョン=9600円)。ホワイトをサンタさんにねだり、ブラックを北川にねだるよしとくん。その彼がポチを追い回すところをみていると、なおさら憂鬱が募ります。
 自分の隣席に座る三芳が、昨日茫然自失と解雇されました。彼自身は、次は自分かとバクバクしています。もちろん、彼は有能でしたので、そんなことはありえないのですが、彼にはそんな風に思えるはずもありません(無理もないでしょう)。
 …しかし。彼の幻想を打ち砕くのはひどいと彼は悩みました。悩んだ結果、彼は一つの決断をしました。
 「値上がりもしたこの際だ、禁煙しよう」
 そして、決めた翌日即行ポケモンを買いました。財布に入っている金が少なければ、嫌が応にも禁煙せざるを得ません。
 きょうもよしとくんはポチやあいりちゃんと庭でおいかけっこをしています。
 北川はそれをみながら、こたつの上にあったみかんを一つ剥きはじめました。