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こがみ ももか
こがみ ももか
novelistID. 2182
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焼け野原にはなにが咲く

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焼け野原にはなにが咲く




いかにもそれっぽい子を選んで声をかけた。顔立ちも、化粧も服装も派手な外見と実年齢のつりあっていない、そんな子だ。方やこちらは着古したスーツ、締め古したネクタイ、どれもくたびれたものばっかりを身につけている。手馴れてそうな彼女にド素人の僕が話を切り出すのには妙な気合が必要だったのをよく覚えている。都会の喧騒、その中心の、ネオンがまぶしかった。
あのとき、がちがちの笑顔の僕に君はなんと言っただろう。
「顔にちょおマジメって書いてる」
「ひっ!」
突然耳元に寄せられたささやきに、僕はすっとんきょうな悲鳴を上げてしまった。しかしすぐに間近から気配が去ったので、頭一つ半下に視線を持って行く。金褐色の髪を肩口でくるくるにした、瞳の大きい少女が、僕を悪戯っぽい笑みをして見上げている。急激に安心感にみまわれて、僕は脱力した。四月、桜の散ったこの時期の風はやわらかな布のようで気持ちがいい。
待ち合わせ場所も真昼間の静かな商店街の入口なのに、僕の頭はふっと過去に飛んでいたようだ。
「ユリア、いい加減そういうのやめようよ……びっくりするだろ」
「その反応がいいんだって。だってさあ、だいたい、考えてることわかるもん」
彼女、ユリアはけたけたと笑って僕の背中をばんばん叩く。加えられた力の意外な強さに細っこい僕はよろしてしまう。我ながら、情けなくて泣けてくる。
外見の華美さに反してこの子は子どもっぽい言動をとった。それがまたかわいくて、そそられる。路上で出会ってすでに三年、彼女は今年十九歳になった。当時から、彼女は僕に買われて生活を潤している。僕には、刑務所にいく覚悟はまったくなかった。
機嫌のいいらしいユリアになにが、と視線をよこす。
「どうせ初めて会ったとき私がなんて言ったんだっけなあとか、しみじみしてたんでしょ」
図星すぎて、馬鹿正直にうなずくしかない。僕が愚鈍なのか、ユリアが聡い子なのか。ぼんやりした男にはよくわからない。
ユリアが歩き出し、僕もついていく。特に行き先は決まっていないらしく、きょろきょろとあたりを見まわしながら商店街に入っていく。彼女の地元で会うのはこれが初めてだ。
「なんでわかったの」
「超わかる。だってさあ、誠実さんはマジメじゃん。誠実って書いてまさみってえ、名が体を表しまくりすぎだし」