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ピコが泣くのは夢の中

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「こうさー、もっと身体のラインが見える服きたらいいのに。ピコちゃんみたいに」
不意に呟かれたので、なるたけ険悪な顔をして振り返る。ユトだ。へらへらと緩い笑みを浮かべたその顔と、朱の散った派手な絹のブラウスは酷く不釣合いだった。
じっと見ていたら、何を勘違いしたのか弁解される。
「いや、これ俺の血じゃないから。というか俺が殺った血でもないよ。お馬鹿な兵隊さんがね、へったくそに殺るから俺にまで血が飛んじゃったの」
かわいそうなシルク。云ってブラウスをちょんと摘み上げキスをする。
「たれもそんなこと聞いちゃあいない」
ぼふんと派手な音をさせてソファに座ると、ユトも隣に腰掛けてきた。
「でさあ、まあ最初の話に戻るけど、ピコちゃんみたいなお洋服着ない?今度買い物に行こうよ」
「やだ。金の無駄。動きにくい」
「俺が買ってあげるから。っていうか今の服装も十分動きにくそうだよ」
そういって少しごわつく丈の長いトレンチコートに手を伸ばしてきた。その台詞は援助交際とやらを迫るおっさんのようだぞと頭の中だけで返答を返しておく。
「ピコちゃん南部戦線でたいそうなご活躍らしいよ。一個小隊壊滅だってさ」
トレンチコートから手を離したユトは、立ち上がりながら血まみれ地獄のおひめさまー、なんてトチ狂った歌を口ずさむ。
「ピコちゃんの歌だってさ。どっかのたれかが唄ってた」
「下品な歌」
ユトは何も言い返さず、ただ笑った。
「明日の作戦はどうする?」
言下に小隊の扱いを問う。ユトは小隊を引き連れての戦闘行為を好まない。余計な血が流れるだけだと知っているからだ。
「いらないさ。もしラヴィエンヌ、お前が自分の小隊に功績を与えたいと考えるのなら、俺はそれも否定しないけど」
そう、何もしなくても、前線にいたという事実だけで功績となる。それでもいいかもしれない。ほんの少し前までそう考えていた。しかし。
「やめておく。もし相手がピコみたいな奴だったら・・・」
「お優しいラヴィエンヌ少佐。あなたのお心遣いに感謝します」
手を取り、忠誠の証。馬鹿らしい。むずがる子供のように手を振るとユトは小さく笑った。
「明日は我ら二人の素敵な一日となろうぞ!」




作品名:ピコが泣くのは夢の中 作家名:おねずみ