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別に日本じゃなくてもいい

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「お前、あいつには優しくしなくちゃあいけないよ」
下駄箱に寄りかかるようにして立っていた男は俺の姿をみとめるとそう云った。はて、あいつ。俺にはとんと覚えがなかった。
「汐見さ」
そんな俺の様子を汲み取ったようで、男は笑って云った。
汐見、ああ。
朝なんだかんだと云って来た背えばっかりひょろりと高い男のことか。

「何であいつに優しくしなくちゃあいけない。そんな道理があるか」

「あるさ。あいつは宮さまのお気に入りだからな」

宮さま。胸がざわついた。
となりのクラスに、女の宮さまがいると隣の席の奴が云っていたのを思い出す。

「宮さまは混血をはじめて見るらしくてな。あいつの金色の髪をお気に入りなんだとよ。あんまりあいつを邪険に扱うと、下手したら学校どころか国から追い出されるぞ」

男はにやにやと笑いながら云い、そのまま外に出て行ってしまった。

「お前!名前は?」

ぎりぎり声が届いたらしく、男が振り返る。

「七尾犬彦」

そう云うと犬彦は、何人もの御付の者がいる女生徒のもとに走った。それが例の宮さまだと、俺はすぐに気付いた。

(七尾とは、)

最近新しく就任した若い逓信大臣と同じ苗字だった。

(もしや、)