赤ずきんちゃん
「な……」
鉄槌を頬に叩きつけられたかのような衝撃。
重さにして200キロ。
通電にも似た狂気の困惑に身を痺れさせ、私はただその巨塊を見上げるだけの置物と化
してしまった。
巨像の口元が稼働する。
「ねぇ……」
呪縛じみた殺気の双眸が、私を睥睨して、鉄塊のような声を発した。
それはヒトであるらしい。おおよそその域を脱してしまっているが。
鮮血に染まった髪。
否。
どうにも、血色の布を被っているようだった。
思い描いていた無垢な少女像など粉砕されてしまった。その、どうしようもない、鋼の
筋肉で出来た鬼人に。
「ねぇおばあさん、あなたの拳はどうしてそんなに小さいの?」
それはね。
オオカミっつっても一応まだ正常な獣だからだよ。お前と違って。
「ねぇおばあさん、あなたの口はどうして糞のような言葉を垂れ流すしか出来ないの?」
それはね。
お前があんまりにも規格外だったから、おばあさん正直困ってるんだよ。
「ねぇ、おばあさん……」
鎌首をもたげる。
岩斧にも似た重すぎる拳が振り上げられる。
直感した。
「私のおばあさんを、どこへ、隠したの?」
死を直感した――。
/赤ずきんちゃん