しんこうのじゆう
「お前生物取るんじゃなかったの?」
四月。クラス替えしてすぐに、自分の教室に呉羽のすがたを見つけて唖然とした。
「うん、でもゆうくんが地学にするって云ったから地学にした」
しまった、云うんじゃなかった。ぎりと奥歯をかみ締めた。地学は一クラスしかない。絶対同じクラスになることが目に見えていたというのに。それともあれか。これは俺の無意識の願望がそうさせたのだろうか。頭を振る。そんなはずはない。こいつと一緒にいて、俺は今までのそう長くない人生絶対に人より多くからかわれている。
「よろしくねー」
にっこりと笑うほっぺたをつねってやりたいと思ったけれど、そんなことをすれば呉羽の思う壺なのでぐっとこらえた。
呉羽と最初に出会ったのは小学一年生のときだ。入学式早々男子生徒にからかわれていたのを助けたら、そのままひよこのように後を付いてくるようになった。最初は妹ができたようでかわいがっていたが、やっぱりそのうち面倒になってきた。そして、現在に至る。