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あのきみを覚えている

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どう表現しようか、きみを。
僕はどう考えても場違いな進学校に合格してしまい、勘違いのまま入学式を迎えることになった。まわりの空気は穏やかで、人々は友好的で、そのとろけたようなぬるさに僕は嫌悪感すら覚えた。
そのなかでも一際ぬるかったのは君とその隣に座る少女で、僕はそのとき、「ああ、確実にこの二人と親しくなることはないだろうな」と思ったものだった。

ところがどすこい

あ、間違えた。
ところがどっこい僕は君と未来の君の彼女とクラスで一番親しくなってしまい、うっかり君たちの本性を知ってしまいさらに馬に蹴られろとしか云えない様な、世界で一番迷惑な他人ののろけ話を聞かされる役目になってしまった。
いまだになぜ君たちがそんなにすばらしい性格をしているか僕には全く理解できない。
君たちは僕を虐げてどうしようというのか。
文句を云おうとするたびにあの日の君と彼女の姿が浮かんで何も云えなくなる。

君は知っているか?
うつくしいことはそれだけですばらしい。
知っているだろう。

そしてそれを有効に活用している君たちを僕は案外好いている。



作品名:あのきみを覚えている 作家名:おねずみ