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「わたしは人を好きになれるかしら？」

何の気はなしに紡いだ言葉はそのまま地面に落ちることなく、あっさりと受け止められた。

「なれるよ」

優しい声音は何かを失くした事のある音をしていた。わたしは彼が何を亡くしたのか知らない。彼も語らない。けれど彼は、確実に大切なものを失ったことがある人間だった。

「浜田くんは今好きな人がいる？」

尋ねると浜田くんは私の目を見た。薄い茶色の瞳は色あせた記憶のようだった。

「いるよ」



私は尋ねなかった。何故好きな人がいるのに彼は悲しい顔をしているのかを。