ごめんねそれがあたしの邪魔をする
最後まで、指をかけるのを忘れずに。
どうしても、ワンハンドでスリーを打ちたかったあの頃を思い出す。
いまはツーハンドでもなんとも思わない。
そのほうが精度がいいし、変に肩の力を使うこともなくやりやすい。
冷たい空気が頬をさす感覚。
一人きりの体育館に朝日。
ボールの弾む音が気持ちよい。
スポーツは、とても神聖なものだと思う。
それが実感できる瞬間。
ガラリと戸が開く音がして、振り返ると間宮がいた。
「早いね」
一言だけ声を掛けられる。
ああ、神聖な時間は終わってしまった。
視界の端にストレッチをする間宮の姿が映る。
彼は美しいフォームでスリーを打つだろう。
私は悔しいと思うに違いない。
その感情が、私と彼を隔てる。
彼のことが嫌いではない。
ただ、彼をうらやむ自分が嫌いだ。
作品名:ごめんねそれがあたしの邪魔をする 作家名:おねずみ