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ぼくたちおとこのこ2

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むらさきの瞳をした妖精は、こちらをみて馬鹿にしたように笑った。
「笑われてるよ」
後ろから覗き込むようにして雪彦が云う。どう返していいかわからなくて、そうだね、としか云えなかった。雪彦は、デリカシーが無いわけではないのだろうけど、思ったことを口に出しすぎるきらいがある。だから格好よいのに女の子にはあまり人気がない。もっとも本人はそんなこと気にしていなさそうだが。
「でも、かわいい」
壜の中を覗き込みながら雪彦は云った。
「ペットによくない?」
確かに、女の子の中には人形やペットの代わりに妖精を飼っている子が結構いる。けれど妖精は犬のようになつかないし、人語を理解するから何かと面倒だと聞く。
「世話大変らしいよ」
「いいよ、俺これ飼うわぁ」
「いや、それ課題だから提出しなきゃだし」
俺が云うと、雪彦はじっとこちらを見た。その目が、少し哀しそうだったから、どうして良いかわからなくなってしまった。だって、三時間も掛けて捕獲したのに、妖精を提出しなかったら課題点がなくなってしまうし、何より優子ちゃんたちはかんかんに怒るだろう。

「せやったらまた採りにいこか」

なんてことない風に小田くんは云った。
「二人の練習にもなるし、ええんちゃう?やから、今日はこの妖精提出して、明日休みやし、妖精採りに行こ」
「え、小田くんもついてきてくれんの?」
「うん。三人でがんばろ。やって俺ら同じ班やん!」
屈託なく笑いながら、すごく軽い感じでそんなことを云えてしまう小田くんを心底尊敬した。なんだろう、この人前世は偉いお坊さんかナイチンゲールじゃないのかな。
「雪彦、それでええ?」
雪彦はこくりと頷きもう何も云わなかった。雪彦は、身体は俺らの中で一番でかいくせに、早生まれのせいかいちいち仕草が幼い。
「したら、明日九時に校門の前で。俺日誌出さなやしついでの妖精もだしとくわ」
小田くんはひょいと俺の手から壜をとってさっさと行ってしまった。
取り残された俺と雪彦は、することもないので寮に戻ることにした。

「何か、小田くんって人間できてるよね」
「あーうん。優しいよね」
「すげえわ本気。去年から思ってたけど、最近本気で尊敬するもん」
「ホモだけどな」

「・・・、」

思わず雪彦の顔を見る。
「え?」
「ん?」
「今なんて?」
「ホモだけどな」
「え、小田くんてホモなの?」
「うん」
「前から知ってたの?」
「うん」
「何で?」
「男の人とキスしてた」


余りにも淡々と話すから、どう返していいか分からなかった。そっかーそっかーなんて云い、とりあえず流してみたけど、戸惑いが大きかった。
そんなことで尊敬が揺らぐことはないけれど。逆に、この驚きが、自分の中に偏見があったことを表しているような気がして、恥ずかしかった。

寮について、自室に戻って、扉を閉めてはあと息を吐いた。


「あ、おかえり」

一人だと思っていたら、同室の美島がいて、心底驚いた。



作品名:ぼくたちおとこのこ2 作家名:おねずみ