ぼくたちおとこのこ1
「ホント、あんたら使えないわよね」
吐き捨てるように云われ、俺たちは笑うしかなかった。
小田くんはちょっと眉を下げて、申し訳なさそうに笑いながらごめんねと云った。
雪彦も笑っている。しかし彼の笑いはいつだって少し軽薄そうで、相手の気分を害するのだ。当の本人はどうもそのことに気付いていない。
やばいなーと思ってたら案の定優子ちゃんの怒号が飛んできた。
「ヘラヘラしてんじゃねえよ!もっと勉強して出直して来い!!」
返す言葉もなくて、もうひたすらぺこぺこするしかなかった。
僕たち男の子1
俺たちがいるのは魔法学校の関西校だ。日本には四つ魔法学校が有り、大まかなくくりで、東北校、関東校、関西校、九州校となっている。別に自分の住んでいる地方の学校に入らなければならないというルールはないが、たいていの魔法使いは自宅から通学できるよう地元の学校に入る。
しかし関東校はエリートが集まるので、受験に失敗しそうな子は、違う地方の学校を受けたりもする。ちなみに、関西校は一番魔法偏差値が低くて、さらに云うと俺は東京出身だが魔法偏差値が低いので関西校を受けた。
要するに落ちこぼれだ。
そして落ちこぼれの俺は、クラスで一番優秀な小田達弥くんと、一番格好いい七瀬雪彦くんと班を組んでいる。
今日は女子の班と合同の実習で、まあ俺と雪彦が足を引っ張りまくって、妖精捕獲という、一時間程度で出来る実習に三時間もかかってしまった。
女の子たちが怒るのも当然だ。
さっき俺たちに怒号を浴びせた優子ちゃんは、うちのクラスで小田くんの次に優秀で、逆を云えば小田くんがいるからいつも二番で、小田くんをライバル視している。
「ごめんね。俺のせいで小田くんまでボロクソ云われて」
壜につめた妖精を教室までもって帰る途中、小田くんに云った。小田くんはさわやかに笑って、全然いいよーと明るく返してくれた。
雪彦はやっぱり気だるそうに歩いている。雪彦は岩手の出身で、暑いのが苦手らしい。いつも暑い暑いと云いながらだらだら歩いている。
壜に入った妖精は何やらわめいているが、俺たちには聞こえない。壜は防音処理がなされていて、外に声が漏れないようにされているからだ。妖精の中には声で人を惑わすものもいる。
昨今、密輸された妖精が逃げ出したりして、生態系を乱しているらしい。それに対処するためと、防衛魔術の基礎徹底のために、よく妖精捕獲が実習課題として出される。
俺は座学も苦手だが、それより一層実習が苦手だった。どだい、そんなに魔力が強くない俺には無理なのだ。
例えば、あの人たちみたいに。
先日、先輩たちの模擬実戦を見た。そのとき、ずば抜けて強い班があった。去年、現役で魔法検定一級に受かった佐古先輩のいる班だ。佐古先輩がすごい魔法使いだということは、全校生徒が知っていることだけれど、一緒の班の二人も負けず劣らずすごかった。
関西校にも、優秀な人はいるんだなあと思った。
俺にもあれくらいの魔力があれば。
簡単にこいつも捕まえられたんだろうな。壜の中の妖精を見た。七色の羽根を持つという妖精は、鋭い目つきでこちらを見ていた。
作品名:ぼくたちおとこのこ1 作家名:おねずみ