購いの系譜2
馬車を降りると、慌ただしく謁見の間に通される。
遠くに玉座が見える。奇妙なものだと思った。この国には玉座が2つあり、王子なのに自分がそこに座る日は決して来ない。
玉座には小さな男が座っていた。しなだれかかるように肘おきに体重をかけるその座りかたは、上品だとは思えなかったが、またその姿に気品を感じたのも事実だ。手入れの行き届いた艶のある黒髪の隙間から、これも同じく黒い瞳が覗く。
お互い礼はするが、かしずくことはない。それは互いが対等な立場にあることを示している。
「今年も、この季節がやって参りました、スイ・シャオ」
「…何もないところですが、街の者には王の歓待に抜かりなきよう言い付けておりますので。どうぞごゆるりと」
微笑むことなしにそれだけ云い、スイは奥に引っ込んだ。彼の身につけていた、美しい、装飾性に富んだグローブが、シエラの網膜にちらついた。