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正しい街

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吐く息が白い。今年福岡は雪が降るだろうか?
小学生のころは、毎年降っていたのに、今では全く降らない年もある。

去年のクリスマスプレゼントの、アンティークの腕時計。繊細な針が7時を指していた。
自由席も、博多からなら必ず座れるのだ。

見送りには来ないで欲しかったので、雅文には何も告げていない。今でも好きだけれど、お互い行き詰まっていたのも事実だ。


カバンから鏡をとりだす。高くもなく、低くもない鼻は、その存在に疑問を抱かせない程度の存在感だ。


朝早いホームは人影もまばらで、その背後に広がる博多の街もまだ静かだ。
この街が嫌いなわけじゃない。けれど私はこの街を出ていく。

腕時計まで外して行く勇気がない私を、この街と雅文は笑うだろうか?





作品名:正しい街 作家名:おねずみ